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「暗黒物質」が太陽系を秒速230キロメートルで回転させている

5/23(木) 6:05配信

幻冬舎plus

鈴木洋一郎

宇宙の質量の27%を占めている「暗黒物質」(ダークマター)。この空気中にも大量に存在しているが、一切の光、電波を発しないため、見ることすらできない。だが、暗黒物質がなければ、地球も人類も生まれることはなかった。まさに暗黒物質こそが、宇宙創生のカギを握る……。そんな謎の物質に迫った一冊が、『暗黒物質とは何か』だ。研究の最前線に立つ著者の、最新の知見が盛りだくさんの本書から、一部を抜粋してお届けします。*   *   *

暗黒物質が銀河を包み込んでいる

1970年代から80年代にかけて、アメリカの天文学者ヴェラ・ルービンたちが行った観測によって、忘れられていた暗黒物質が再び脚光を浴びます。ツビッキーが「銀河団」の運動スピードを測ったのに対して、ルービンたちが観測したのは「銀河」1つ1つの回転速度でした。

数千個の星が集まって形成される銀河は、それ自体が回転運動をしています。私たちの天の川銀河も例外ではありません。地球は太陽のまわりを秒速30キロメートルの速さで回転していますが、その太陽系全体も、銀河系全体の重力に引っ張られて、秒速230キロメートルで回転しているのです。

ルービンが最初に測ったのは、アンドロメダ銀河の内側と外側の回転速度の差でした。銀河は「バルジ」と呼ばれる中心部に多くの星が集まっています。銀河系の質量のほとんどが集中しているので、中心部に近づくほど星が受ける重力が強い。ニュートン力学によれば、重力の強さは距離の2乗に反比例するので、重力源から離れるほど受ける重力は弱まります。

だとすれば、強い重力を受ける中心部ほど回転速度は速くなります。事実、たとえば太陽系の惑星の公転速度も、太陽に近い軌道上にある水星がもっとも速く、太陽から遠い惑星ほど遅くなっています。

ところが、ルービンが多くの銀河を観測したところ、その回転速度は内側でも外側でもほぼ一定であることがわかりました。バルジから遠く離れた周縁部は、中心部からの重力が弱まっているはずなのに、バルジ付近とほぼ同じ速度で回転していたのです。

ニュートンの法則が間違っていないとすれば、そこには目に見える物質以外の重力源があるとしか考えられません。それも、銀河の外側ほどその重力源が多いことになります。そこでルービンは、自らの観測結果から、星や星間ガスなどの物質のおよそ10倍の暗黒物質が、銀河を大きく包み込むようにまとわりついていると考えました。

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最終更新:5/23(木) 6:05
幻冬舎plus

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