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自治体が乗り出す「地域ブランディング」の盲点とは 専門家が解説

5/23(木) 6:00配信

日経クロストレンド

 地域活性化を狙ったローカルブランディングに乗り出す自治体が増えているが、失敗することも多い。電通でブランディングに関わる仕事を幅広く手掛けてきた若林宏保氏は、行政上の「地域」ではなく、人々が共通の意味を見いだせる「プレイス」をベースにブランディングをすべきだと説く。


Q. ローカルブランディングはなぜ成功しにくいのでしょう?

A(若林氏). ローカルブランディングには、県や市などの行政と企業、市民などが参加しますが、多くの場合、行政主導です。しかし、行政は動画やポスターを制作するのがメインで、方向性を示すことはあまりありません。そのため、企業や市民はバラバラの方向を向きがちになり、1方向に集約することが難しくなります。それが成功しにくい大きな原因と考えています。

Q. プレイス・ブランディングとはどういうものですか?

A. 地域を市や町、県などの行政単位で考えるのではなく、その場所にいる人たちが「ここはこういう場所だ」と意味付けしている空間で切り取って、ブランディングしていく方法です。瀬戸内地方のような広い空間でも、鉄道沿線でもいい。範囲ありきではなく、うまく生かせる範囲を探すことが必要で、その場所をプレイスと言っています。

●成功に導く5つのフェーズ

Q. プレイス・ブランディングの手法とはどういうものですか?

A. 5つのフェーズがあります。まず、範囲をどの単位にするか。諏訪の事例では、発信力を高めるため、近隣の6市町村を1つの単位としました。

 次に意味付け(センス・オブ・プレイス)をします。生活者へのインタビューや、地元誌編集者などに聞き、現地視察などをしてリサーチします。そして「言葉」を探す。東急池上線沿線の事例では、生活しやすい街のイメージから「生活名所」の言葉が、宮崎市の事例でも市全体を食堂と見立てて「宮崎食堂」という言葉が生まれました。

 フェーズ3は舞台の設定です。キーマンとなる人や既存の活動を把握する他、企業や行政の支援などを取り付けます。そしてフェーズ4でコンテンツを創出し、フェーズ5で発信活動をします。広告は打たず、メディアに取り上げてもらうためのPRがメインです。Webでも発信します。

Q. ブランディングを成功させるポイントとなるのは何ですか?

A. 1つはキーマンの発掘です。そうした人は地元誌編集者やローカルメディアとつながりを持っているケースが多く、どの地方にも優秀な人がいます。

 もう1つは自走させることです。我々は3年ほどかけてフェーズ5までの仕掛けをレクチャーしますが、その後キーマンを中心に地元の人たちだけで動かしていけないと、失敗します。

 プレイス・ブランディングは観光系だけでなく、産業創造系や居住系などでも求められます。地方だけでなく、大都市の衛星都市などもブランディングを考えなければいけない時代だと思います。


【若林宏保(わかばやし・ひろやす)氏】

電通 クリエーティブ・ディレクター

電通入社以来、ブランディングに関する幅広い仕事に従事。2007年より電通地域ブランドプロジェクト abic(アビック)を推進。主な著書に『地域ブランド・マネジメント』(共著・有斐閣)、『プレイス・ブランディング─地域から“場所”のブランディングへ─』(有斐閣)

原 武雄

最終更新:5/23(木) 6:00
日経クロストレンド

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