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日本の著作権法:権利保護とともに利活用を促進する制度を

5/24(金) 15:02配信

nippon.com

岡本 健太郎

環太平洋連携協定(TPP11)の発効に伴い、日本の著作権法が改正された。著作権の保護強化とデジタル社会への対応が図られたが、筆者は著作物の「利活用」を図る視点も今後の課題だと指摘する。

2018年12月30日、環太平洋11カ国におけるモノ、サービス、投資等の自由化を目的として、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(通称 TPP11)が発効した。また、これに伴い、同日、日本の著作権法が改正された。

米国のTPP離脱後、TPP11においては、著作権の「保護期間の延長」、「技術的保護手段」などの一部項目は凍結された。しかし、今回の著作権法改正では、これらは引き続き改正項目とされるなど、いわば日本独自の改正も含まれている。

著作権の保護期間を原則「死後70年まで」に

今回の著作権法改正は5項目であり、概して著作権の保護強化を図るものだ。まず改正項目をざっと見てみよう。

(1) 保護期間の延長

著作権の保護期間は、原則「著作者の死後50年まで」から、原則「死後70年まで」に延長された。また、実演家やレコード製作者の権利の保護期間も、同様に、50年から70年に延長された。なお、映画の著作物の保護期間は、従前どおり「公表後70年まで」である。

(2) 著作権等侵害罪の一部非親告罪化

著作権侵害は刑事罰の対象である。法定刑は、個人は10年以下の懲役・1000万円以下の罰金、法人は3億円以下の罰金と、他国と比べても重い。だが親告罪であって、刑事裁判を行うには、著作権者等による刑事告訴が必要である。今回の改正は、海賊行為のような正規品市場に影響のある罪質が重い行為について非親告罪化するものである。

(3) 法定損害賠償制度

著作権を侵害された著作権者は、侵害者に損害賠償請求できる。著作権者はその際、損害額の立証が必要であり、立証は容易ではない。このため、著作権法には立証負担の軽減を目的として、損害額の推定または算定に関する規定がいくつか設けられている。今回の改正は、そのメニューを1つ増やし、侵害された著作物が著作権等管理事業者(JASRAC、NexToneなど)により管理されている場合には、その使用料規程を損害額の算定に利用可能とした。

(4) アクセスコントロールの回避規制

著作物の無断複製・利用を防止する保護技術には、1.音楽、映像、ゲーム等の著作物の無断複製を防ぐ技術的手段(コピーコントロール)、2.衛星放送のスクランブルのような、著作物の視聴等を制限する技術的手段(アクセスコントロール)などがある。改正前は、コピーコントロールの回避は規制対象であったが、アクセスコントロールの回避は規制対象外だった。今回の改正で、アクセスコントロールの回避も規制対象となった。

(5) 配信音源の二次使用に対する報酬請求権

放送事業者がCDを利用してテレビ・ラジオ放送を行う場合には、日本レコード協会や日本芸能実演家団体協議会(芸団協)が放送事業者から音楽使用料などをまとめて受取り、レコード会社、歌手、演奏家等に分配している。改正前は、レコード会社や実演家には、CD等の媒体が利用された場合に限り二次使用料が支払われていたが、今回の改正で配信音源も二次使用料の対象に加えられた。

アクセスコントロールの回避規制や配信音源の二次使用に対する報酬請求権などについての法改正は、デジタル化の進展に対応する側面がある。また法定損害賠償制度については、やや小規模な制度拡充に留まった。

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最終更新:5/24(金) 15:02
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