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携帯がつながりにくい建設現場の悩みを解消した「IoT分電盤」開発秘話

5/24(金) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

 工事現場は携帯電話がつながりにくい。こう聞くと、山の中やトンネルの現場を思い浮かべるかもしれないが、街中にあるビルの高層階や地下も例外ではない。

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 地表に近い場所では電波が通じても、コンクリート製の床や壁が重なる場所では携帯の電波を受信しにくい。建物の外側は完成したように見えても、内部の工事は終わっていない。携帯会社がアンテナを設置して通信環境を整えるのは工事の最終段階なのだ。

 2015年に竹中工務店に中途入社した西野高明は、そこに目を付けた。西野は大学でロボットを研究し、新卒で電機メーカーに就職。電波や電磁の研究といったエレクトロニクス領域でキャリアを積んできた。

 海外メーカーが台頭し価格競争が激化する電機業界に見切りをつけた西野は、専門知識を生かせる新たな場を探した。そして建設業界に目を向けた。建設業界は深刻な人手不足に対処するため、あらゆるモノがインターネットにつながるIoT化を急いでいたからだ。

 竹中工務店に転職して間もない16年のある日、西野は30階建ての高層ビルの建設現場で携帯がつながらないことに気付いた。

 「この業界はIoTやICT(情報通信技術)化を急ぐが、そもそもエレクトロニクスの導入が進んでいない」。あらためて実感した。

 工事現場には仮設電源が整備されている。建設機械の操作や、照明用に電気が必要だからだ。

 電気が通っているならば、「高速電力線搬送通信設備(PLC)が使える」。そうひらめいた。

 PLCは普通の電力線に高速のデータを乗せて送る技術のこと。電気を流すために使う電源線にPLCのアダプターを取り付けると、通信用にも使えるようになるのだ。

● かつて導入を阻んだ ノイズ問題に再挑戦

 現場の仮設電源は、本設電源と違って配線や分岐が少なく、構造が単純だ。ならばPLCと相性はいいと予想し、現場と研究所を往復して実験する日々が始まった。

 すぐに現場ならではの課題が見つかった。現場には電動工具がたくさんあり、電気を使うと工具類からPLC通信を邪魔するノイズが生じる。工具をコンセントにつなげるほどに、ノイズが増えてしまう。

 これではPLCを導入しても、工事が集中する昼間は通信速度が落ちて効率が悪い。

 この問題を解消すべく、コンピューター上に仮設の分電盤を配置して解析し、ノイズを遮断するフィルターをどこに付ければいいのかを解析する技術(シミュレーションシステム)を開発した。前職の知識を生かしたものである。

 物理的にノイズを軽減するフィルターも開発し、解析を基に現場で機器やコンセントが連なるブレーカーと仮設の電源線の間に取り付けた。工事現場に通っては、測定を繰り返した。

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最終更新:5/24(金) 6:01
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