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「米中決裂」でも中国が早期の貿易協議合意を望む事情

5/24(金) 6:00配信

ダイヤモンド・オンライン

 米中協議が土壇場で“決裂”した大きな理由は、構造改革が実現するまでは制裁関税を維持する構えだった米国に対し、中国側がすべての追加関税即時撤廃などを「核心的関心事」として求め、譲歩しなかったからだとみられる。

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 だが、貿易戦争が長期化すれば、中国が被る打撃は大きい。

● 直前までは「合意」を 中国側も楽観していた

 ワシントンでの第11回米中貿易協議を控えた5月5日、米トランプ大統領が、猶予中だった2000億ドルの中国製品に対する制裁関税の引き上げを10日から実施すると公表したことで、米中摩擦に対する市場の楽観ムードは一変した。

 さらに米国は13日、対中制裁関税第4弾として、3000億ドルの中国製品への25%追加関税策を発表した。実施は早くとも6月末とみられており、実現すれば、これまでの措置と合わせて中国からの輸入のほぼ全額に25%の追加関税が課されることになる。

 一方で、中国側も13日に、600億ドルの米国製品に対する報復関税を6月1日から実施すると発表。貿易戦争は泥沼化の様相だ。

 昨年12月に約1年ぶりとなる米中首脳会談が開催されて以降、両国は合意に向けて計6回(第11回を除く)のハイレベル通商協議を実施してきた。

 その間、米国側が12月に中国に求めた農産品等の輸入拡大、及び中国の構造改革(技術移転の強要/知的財産保護/非関税障壁/サイバー攻撃/サービス・農業分野)に対し、中国は外商投資法の成立を含む対応策を講じており、各協議後の中国側の報道では「新たな進展が見られた」など前向きなコメントが目立った。

 筆者が今年3月に北京・上海を訪問した際の現地エコノミストらに対するヒアリングでも、米中摩擦はこれ以上悪化せず、何らかの合意に達するとの見方で共通していた。

● 「核心的関心事」で対立 改革の監視や文書公表に反発?

 なぜ両国は制裁と報復の応酬に再び陥ってしまったのか。

 米ライトハイザー通商代表部代表は、「中国が合意事項を後退させた」とコメントしており、その他報道でも米国側は中国が合意済み文書の再交渉を求めたことを問題視したと指摘されている。

 これに対し、中国の劉鶴副首相は第11回協議後のTVインタビューで、今回の事態は交渉過程の正常な範囲の曲折であり、両国の協議は決裂していないと述べている。

 劉副首相のインタビュー時の発言を手掛かりに、「決裂」の背景を整理しよう。

 劉鶴副首相は、中国側の3つの「核心的な関心事」は必ず解決されなければならない、と強調している。

 その3つとは、(1)すべての追加関税の撤廃、(2)中国の輸入拡大が実際の貿易の状況に合致すること、(3)協議合意文書を「非公開」にすることだ。

 新華社は、この核心的な関心事で米中間の齟齬(そご)が生じていると伝えている。

 (1)のすべての追加関税撤廃は、中国側がかねて主張してきた事項だ。米国側は中国が法改正等を含む構造改革を実現するまで関税を維持するとみられており、妥協点がいまだ見いだせていない模様だ。

 (2)については、昨年12月の米中首脳会談で、中国が米国から農産品等の輸入を拡大させることで合意した際に、未公表ながらも両国で具体的な輸入拡大額が共有されていたと推察される。

 一時期、中国が米国からの輸入拡大について莫大な額を提案したなどと報じられたが、非現実的な輸入拡大は受け入れられないとの中国側の意思が示されているとみられる。

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最終更新:5/24(金) 6:00
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