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日本が輸出に頼らなくてもやっていける国になる理由

5/24(金) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

 従来の日本経済は輸出頼みであったが、輸出に頼らない体質に変化しつつある。その理由について考えてみよう。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)

● 米国が“風邪”をひくと 日本は“肺炎”にかかっていたが…

 戦後、日本は極度の外貨不足に陥っていたため、米国の景気が悪化して日本の輸出が減ると、たちまち外貨が不足して資源が輸入できなくなり、日本経済は大変苦しむことになった。

 その後、外貨不足は解消したものの、今度は需要不足に陥り、米国の景気が悪化して日本の輸出が減ると、日本は深刻な不況に陥るようになった。

 しかし、最近になって、日本経済が輸出頼みから脱する兆しが見え始めている。その理由は、少子高齢化による労働力不足、海外からの投資収益の増加である。

● 労働力不足ならば 需要としての輸出は重要ではない

 日本経済は、少子高齢化による労働力不足の時代を迎えつつある。今はアベノミクスによる好景気で労働力不足であるが、10年もすると「好況時は超労働力不足、不況でも少しは労働力不足」といった時代がくるだろう。

 そうなると、海外の景気が悪化して輸出が減っても、日本の景気は悪化しにくくなる。今までは「輸出企業がリストラすると、リストラされた元社員が給料をもらえないから消費を減らし、景気がさらに悪化する」という悪循環が生じていた。しかし今後は、輸出企業をリストラされた元社員が容易に別の仕事を見つけられるので、消費が減らないと考えられるからだ。

 むしろ、今後は需要があっても輸出企業が労働力不足で生産を増やせず、海外現地生産のための工場を建てることで対応するようになるのかもしれない。バブル崩壊後の長期低迷期とは、発想を根本的に変える必要がありそうだ。

 需要としての輸出が重要でなくなると、円高も怖くない状況になる。ITバブルの崩壊、リーマンショックの際には米国経済が不況になり、米国が金融を緩和し、日米金利差の縮小から円高になったため、輸出企業にとっては需要減と円高のダブルパンチとなったが、それも今後は気にならなくなるだろう。

 円高が日本経済に悪影響を及ぼすのは、主に輸出数量の減少を通じてである。円高自体は輸出企業が持ち帰った外貨が安くしか売れない影響と、輸入企業が支払代金の外貨を安く買える影響がおおむね等しいので、世の中の人が考えているほどの影響はない。

 デフレ気味の経済であれば、円高による輸入物価下落がデフレを深刻化させかねないが、既に日本経済はデフレを脱却しており、今後は少子高齢化による労働力不足で賃金が上がり、コストプッシュ・インフレ気味の経済になるから、その意味でも円高の影響は限定的だろう。

● 経常収支が赤字に転落しても 日本経済は大丈夫

 「輸出したくても買ってくれない」ことが気にならないとしたら、「輸出製品を作りたくても労働力不足で作れない」状況になった場合はどうだろうか。その結果、経常収支が赤字になり、日本が海外から借金する国になってしまうのだろうか。結論として、過度な懸念は不要と考える。

 将来は、労働力不足で輸出産業が採用難となり、工場を海外に移転する動きが本格化する可能性がある。そうなると、貿易収支は大幅な赤字となろう。しかし、経常収支が赤字になるのは相当遠い将来の話かもしれない。

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最終更新:5/24(金) 12:05
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