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浦和vs.湘南、山根視来の劇的ゴール。あの時あの位置にCBがいた理由。

5/24(金) 17:01配信

Number Web

 「ナイスシュート、ありがとう! 泣いちゃったよ、ほんとに」

 Jリーグ史に残る壮絶な逆転劇の翌週最初の練習日、湘南ベルマーレのトレーニング場では複数のファンが山根視来に声をかけ、サインをねだっていた。練習場からクラブハウスへ戻る途中の階段には、この英雄が表紙を飾るサッカー専門紙が置かれていた。

【動画】誤審より目に焼きつけたい、山根の熱いコメント。

 「自分がこれの表紙に載る日が来るなんて、思ってもみませんでしたよ」と山根ははにかんだ。

 5月17日の敵地でのJ1第12節、湘南は浦和レッズに2-3の逆転勝利を収めた。2点を先行された後、サイドネットを内側から揺らした杉岡大暉のゴールは認められなかったが、彼らはその誤審を力に変え、後半に3点を返して逆転。試合終了直前に、極めて高い価値のある決勝点を奪ったのが、25歳のDF山根だった。

3バックの右がなぜ敵陣中央に?

 表示された追加タイム3分を回る頃、ファブリシオのミドルをGK秋元陽太が掴み、中盤の右にいた山崎凌吾へフィードを送る。高いボールを的確に収めた長身FWは、センターサークルにいた山根へパス。

 すると背番号13は、前方の松田天馬が左に流れて空けたスペースにドリブルで持ち込み、ボックスに入ったところで右足を振り抜いた。

 不条理な判定への悔しさや怒り、あるいは信じ続けること――。チームメイト、スタッフ、サポーターら、すべての人々の想いを乗せたボールは、相手DFに当たって縦回転を生み、GK西川周作の上を抜けてゴールに吸い込まれていった。その瞬間、彼らの感情は爆発し、冒頭のファンのように涙を流す人の姿もあった。

 それにしてもなぜあの時、ライトバック――普段は3バックの右だ――が敵陣の中央にいたのだろうか。

攻めきれるだけの体力が残っていた。

 「まず隆くん(野田隆之介)に収まりそうになった時、真ん中にスペースがあったので、そこに走っていったんです」と山根は振り返る。

 「その時は相手ボールになったけど、後ろにはけっこう人数がいたし、ここでまた攻撃に切り替わったらチャンスだなと思って。あと前線の選手が強度の高い動きを続けてきただけに、終盤はちょっと辛そうで。

 自分にはまだ攻めきれるだけの体力が残っていたので、後ろは味方に任せてあの位置にいました。そしたら本当にボールが来て、(松田)天馬が前を開けてくれ、右の大外には(古林)将太くんも上がって来てくれて。だからこそ、相手が僕に寄せきれなかったんだと思います」

 大卒4年目の元サイドアタッカーはそう謙遜するが、このDFの大きな持ち味のひとつにボールを運ぶ力がある。

 以前、曹貴裁監督に彼を最終ラインで起用する理由を尋ねたところ、「あいつをあそこで使うのは、たぶんオレぐらいだろうね。いいアクセントになっていると思うよ」と返答。それは昨春のことで、当時のチェルシーのアントニオ・コンテ監督が3バックの一角にセサル・アスピリクエタを起用し、イングランド代表のガレス・サウスゲイト監督が同じ位置にカイル・ウォーカーを配していた時期と重なる。

 2人とも典型的なCBではなく、ドリブルやクロスを身上とする攻撃的なSBだ。

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最終更新:5/24(金) 17:01
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