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実は4回目だった北朝鮮短距離ミサイル実験、国防力強化へ

5/24(金) 18:00配信

日経ビジネス

第2回米朝首脳会談の前から短距離弾道ミサイルの実験?

 金正恩は、施政演説で「我々は、強力な軍事力によってのみ平和が保障されるという哲理をつねに銘記し、自衛の原則を堅持し、国防力を引き続き打ち固めなければならない」と語った。それはそのまま実行された。

 施政演説の5日後である4月17日に金正恩は、兵器開発を担う国防科学院が実施した「新型戦術誘導兵器」の発射実験に立ち会った。海外メディアがあまり注目しなかったこの実験は重要な意味を持っていた。2017年11月29日以来、弾道ミサイルの実験を止めていた北朝鮮が17カ月ぶりに、新たに開発した弾道ミサイル実験をしたことが疑われたからである。しかし、北朝鮮は「新型戦術誘導兵器」の写真を公開しなかった。そのため、米韓は問題にしなかった。

 ところが、北朝鮮はこの「新型戦術誘導兵器」をおそらく以前にも実験している。金正恩が立ち会って国防科学院の試験場で実施した「先端戦術兵器」の実験で、北朝鮮は2018年11月16日に報道した。この時も、第2回米朝首脳会談の開催に向けて協議を進めたい米韓は全く問題にしなかった。

 これが、もし短距離弾道ミサイルであれば、北朝鮮は第2回米朝首脳会談で物別れになる前から、短距離弾道ミサイルを新たに開発していたことになる。そして、4月17日の実験は、2回目の短距離弾道ミサイルの実験だったことになる。

 2019年4月17日に実験した「新型戦術誘導兵器」と、2018年11月16日に報道された「先端戦術兵器」が短距離弾道ミサイルである可能性が高いと見る理由は2つある。1つ目は、開発したのが国防科学院である点だ。国防科学院は以前は第2自然科学院と呼ばれていた研究機関で、2017年8月23日の朝鮮中央通信の報道から分かるように、弾道ミサイルを開発している。

 2つ目は「新型戦術誘導兵器」と「先端戦術兵器」の実験に金正恩が立ち会っており、その随行員の中に陸軍の将官である朴正天(パク・ヂョンチョン)が含まれている点である。朴正天は2016年11月11日以来、砲兵局長であることが分かっている。中・長距離弾道ミサイル部隊は戦略軍が率いているから、短距離弾道ミサイルは砲兵局長が管轄していると推定される。

●なぜ短距離弾道ミサイルを開発したのか?

 ただし、砲兵局長は短距離弾道ミサイルだけを管轄しているのではない。2015年1月7日に報道された「朝鮮人民軍前線軍団第1除隊歩兵師団直属区分隊の無反動砲射撃競技大会」で初めてその存在が明らかにされたので、無反動砲兵も管轄していることが分かる。ちなみに、この時の局長は陸軍中将である尹永植(ユン・ヨンシク)であった。

 朴正天は、砲兵局長になる前は火力指揮局長であった。火力指揮局長としての朴正天は、2014年12月30日に報道された朝鮮人民軍第851軍部隊管下の女性放射砲(多連装ロケット砲)区分隊の砲射撃訓練指導に参加しているので、火力指揮局長は多連装ロケット砲兵を管轄していたと考えられる。ただし、朴正天の後任の火力指揮局長はいまだに不明であり、もしかしたら朴正天が砲兵局長に就任した際に統合したのかもしれない。

 砲兵局長が短距離弾道ミサイルだけでなく、無反動砲兵や多連装ロケット砲兵も管轄しているならば、「新型戦術誘導兵器」と「先端戦術兵器」も、無反動砲や多連装ロケット砲である可能性がないわけではない。国防科学院も弾道ミサイルだけを開発しているわけではない。しかし、5月に入って、「新型戦術誘導兵器」と「先端戦術兵器」はやはり短距離弾道ミサイルを意味することが分かった。

 ということは、やはり国防科学院が開発していたのは新しい短距離弾道ミサイルだったのである。では、第2回米朝首脳会談を開催するための準備を米朝がしている最中に、なぜ国防科学院は短距離弾道ミサイルを開発していたのであろうか。 国防科学院は弾道ミサイルを含めた兵器を開発するのが業務である。しかし、米朝協議が続いている状態では、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や中長距離弾道ミサイルを開発することは止められていたのであろう。トランプは2018年6月12日の第1回米朝首脳会談の後の記者会見で、金正恩が弾道ミサイルの発射実験をしないと約束したと言っていた。ただし、これは北朝鮮側では大型弾道ミサイルの発射実験をしないという約束として認識されている。そのために、国防科学院の弾道ミサイルの技術者たちは、米朝トップ同士の約束に抵触しない短距離弾道ミサイルの開発を進めており、金正恩もそれを許可していたのであろう。

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最終更新:5/24(金) 18:00
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