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【著者に訊け】森田真生氏 『数学の贈り物』

5/25(土) 7:00配信

NEWS ポストセブン

【著者に訊け】森田真生氏/『数学の贈り物』/1600円+税/ミシマ社

〈いま、ここ〉に、停滞しようというのではない。〈いまがいまであり、自分が自分であるままに、気づけば冬は春であり、生者は死者に化している〉〈だから、いまある場所を引き受けることは、いまある場所にとどまることではない〉と、『数学の贈り物』の著者・森田真生氏は、いまここ=presentの儚さ、豊かさと、あくまで能動的に対峙する。

〈数学を緒に〉、より全人的な知と学びを追求する彼は、文系から理系に転じ、思索者へと転じた、独立研究者。そして〈情緒〉による知の確立を説いた明治生まれの数学者・岡潔や芭蕉、フランシスコ・ヴァレラといった先人の言葉に導かれ、また日々の暮らしから得た様々な発見を、19篇の贈り物として本書に綴る。

 それは先人から著者へ、読者へと手渡された時空を超えたプレゼントでもあり、現在と過去と未来とを繋ぐもの――本書ではそれを〈理性(reason)〉と呼ぶ。

〈現在と過去をつなぐ「理由」。「いま」から未来を導く「推論」。「理由」も「推論」も英語ではreasonという。「いま」だけにはいられない人の心は、reasonの力で過去や未来を想い、そして「理性(reason)」の力で他者の心を推し量る〉とある。幼少期をシカゴで過ごし、東大文II時代に岡潔の著作『日本のこころ』(1967年)と出会って数学科に転入した若き異能は、言語の垣根を越えて本質に立ち帰ることのできる、言葉の越境者でもあった。

「reasonを理性と訳すにしても、明治人は翻訳にとても苦労しました。原語にぴたっと対応する日本語があらかじめあるわけではないので。言語を横断するときにこぼれ落ちたり、ずれるところが必ずあって、これ自体がとても面白い。

 数学も学科としての数学より、〈はじめから手許にあるものを掴む〉ことを意味するmathematicsの語源、マテーマタを意識しています。物事を根源的、哲学的に考えようとする時、避けて通れない営みだと思っています」

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最終更新:5/25(土) 7:00
NEWS ポストセブン

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