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旧車のフルレストアに潜む危険! 美しさと引き替えに失われるものとは

5/25(土) 7:04配信

WEB CARTOP

再塗装によりダメージを受ける場合も

 旧車趣味のなかでも、フルレストアというのは憧れというか、別格の扱いだ。ちまちまと直すのもいいが、ボディ、そしてエンジン、ミッション、駆動系などのすべてをリフレッシュ。新車のようにする、まさにクルマの初期化だ。

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 しかし、フルレストアがすべてにおいて優るというわけではないのもまた事実。決してフルレストアを否定するわけではなく、程度が悪ければレストアするしかないので、すべての旧車に当てはまるわけでもないのだが、「レストアはしないにこしたことがない」というのも旧車維持の真理。

 それがノンレストア車と呼ばれるもので、某旧車雑誌では未再生原形車と呼んでいたりもする。その名のとおり、新車から何もしていない個体のことで、当然のことながら程度が抜群にいいものを指す。そんなクルマあるのか? と思うかもしれないが、丁寧に乗りながらしっかりと手入れされてきた奇跡の1台というのは存在する。ちなみにボロボロな個体を手入れしていないのは、ただのボログルマというだけだ。

 なぜノンレストア車が珍重されるのかというと、まずボディに関しては、塗装は剥かないに越したことはない。鉄板や下地、そして塗装に問題がなければ、生産時のままのほうがよく、すべて剥離してシビアに処理しても一度露出してしまった鉄板はどうしても耐久性や質の点で劣ることが多い。空気に一度も直接触れていないか、一度でも触れてしまったかという差は大きい。

旧車がもつ味が失われることもある

 そして切り貼りしての溶接にも問題があって、鉄板に火が入ることで耐久性は落ちる。さらに袋部分で手が入らない裏側の防錆を完璧に行うのは非常に難しい。防錆処理は、新車生産時のように防錆剤のプールに車体まるごとドブ漬けできれば話は変わってくるだろうが、一般的には無理である。

 また塗装自体も、オリジナルに対してフルレストアしたものはきれい過ぎる場合もある。たとえば昔の塗装はラッカーを使っていたりと、いまでは使われなくなった塗料を使っている場合が多い。そもそも当時と同じ塗料は手に入らないし、耐久性などのために最新の塗料がレストアでも使われるのは仕方がないとはいえ、過剰にきれいになってしまい、味がなくなってしまうこともある。

 塗り方自体も昔はゆず肌(表面がうねうねとした仕上がり)だったりする一方、最近ではツルツルが当たり前で、レストアでも現代的な光沢を放つものもある。この点をどう評価するかだが、オリジナルと違うのは事実だ。

 そしてメカでは、部品が手に入らないというのは別としても、いま供給されているパーツは見た目がオリジナルと違っていることも多い。そうなると、見た目が元とは違ってくる。

 つまりオリジナリティとはなにか? フルレストアとはなにか? という究極の問題になってくるわけで、この点でもノンレストアで程度極上というのがあれば、フルレストアにも優ることがありうるというのはわかっていただけるだろう。ピカピカに再生されたフルレストア車も気持ちいいが、未再生車には宿り続ける魂というのもが感じられることもあるのだ。

 ただ海外で行われている究極のフルレストアでは、製造当時に使われていたオリジナルのボルトにまでこだわる場合もある。タイヤはさすがに無理と思いきや、展示用に当時物を探し出したりするから驚かされる。伝統あるコンクール・デレガンスでは当時の組み付け方まで審査されるが、ここまでやればレストアにも意義は出てくるかもしれない。

 日本の場合、フルレストアという定義から見直す必要があると思うし、フルレストアという言葉を安易に使うのも考え直したほうがいいかもしれない。いずれにしても、未再生のノンレストアで問題なければ、むやみにレストアする必要はないと言っていい。

近藤暁史

最終更新:5/25(土) 7:04
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