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セルジュ・ニャブリ。最大の武器は 「後出しジャンケン」にあり

5/25(土) 22:43配信

footballista

 しかし、ニャブリはこの両方を武器にしているため、敵に2択を突き付けることができる。裏の警戒と、手前の警戒だ。裏を警戒すれば手前で受けてドリブルを開始。手前を警戒すれば一気に背後に侵入する。

 さらにニャブリは、味方を使うプレーとしてハーフスペースに絞って受けるプレーもこなす。ハーフスペースに絞ることで、敵サイドバックに判断を強いる。SBが内側についてくれば、クロス精度の高いキミッヒが空いたスペースを駆け上がり、中央のエース・レバンドフスキに送り届ける。もしくはSB裏へのダイナミックな走り込みを得意とするレオン・ゴレツカが侵入し、ゴールを脅かす。

 SBが内側についてこなければ、センターハーフとのマッチアップとなる可能性が高い。そうなればスピード面でのミスマッチが起こり、ニャブリの武器であるスピードがさらに際立つこととなる。

実は難しい、サッカー版「後出しジャンケン」

 以上のように、敵の出方に応じて「後出しジャンケン」のように自分の繰り出す手を変えることができる。これが彼の最大の強みである。言葉にすれば非常にシンプルで簡単そうに思える。だが実際のサッカーではそう簡単にはいかない。

 この後出しジャンケンを成立させるには「実装」、「認識」、「判断」の3ステップが必要となる。まずは「実装」、複数の強力な選択肢を備えている必要がある。サッカーにおいてグー、チョキ、パーの力関係は平等ではない。選手の能力に応じるからだ。

 紙すら裁断できない鈍(なまくら)の刃もあれば、石をも裁断する名刀も存在する。複数の選択肢を備えること自体難しいが、それぞれの選択肢が敵の出し手より強力である必要もある。バイエルンのように、人数をかけずサイドから個人能力で破っていくようなチームであればなおさらだ。

 複数の強力な選択肢を備えたうえで、次に必要なのは敵の打ち手を認識する力だ。自身をマークする選手、ボールホルダーの状態、周囲の敵・味方の配置およびスペース。これらを正確に認識し、次に自分が出す手を選択する。刻々と変化する戦況から、スピーディーに判断材料の収集を行なわなければならない。的確な認知を行なうための観察力、冷静さ、広い視野、予測が必要となる。

 最終的には、収集した判断材料をもとに、どの出し手を選択するのかを「判断」する。仕上げとなるこの部分に綻びが生じれば、たとえ強力な選択肢を持っていようと苦しくなる。

 ニャブリの場合、もともとスピードのある選手ではあったがプレー自体は一本調子、相手に対策されやすい選手でもあった。しかし「認識」と「判断」の部分の成長に伴い、エゴが除かれ、状況に応じたベストの選択ができるようになってきた。無駄の少ない、洗練されたプレーヤーへと進化してきているのだ。

 今シーズンにおいては駆け引きの部分に成長が見られる。「最初はグー」ではなく、チョキやパーを見せることで相手にリアクションを促す。要するにこちらからアクションを起こして主導権を握るのだ。

 主導権を握られて後手に回るディフェンダーからすれば、彼のスピードに対応するのはさらに難しくなる。

 ニャブリは、アリエン・ロッベンのように「わかっていても止められない武器」があるわけではない。しかし「敵に的を絞らせない」という強みを生かし、それぞれの武器を引き立てている。この部分において、彼は現在ブンデスリーガナンバーワンのウイングと言えるだろう。

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最終更新:5/25(土) 22:43
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