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「ありがとう、お疲れ様…」。鳴り響いた香川真司への拍手。無駄ではなかったトルコでの日々

5/25(土) 12:07配信

フットボールチャンネル

 スュペル・リグ最終節、ベシクタシュ対カスムパシャの一戦が現地時間24日に行われた。日本代表MF香川真司にとってはこれがベシクタシュでのラストゲームとなるかもしれない。そんな一戦で同選手は先発出場を果たしたが、ゴールやアシストといった目に見える結果を残すことができず、80分にベンチへ退いた。しかし、スタジアムからは拍手が鳴り響いた。それは一体、何を意味するのか。(取材・文:本田千尋【トルコ】)

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●途中交代の香川。鳴り響く拍手

 交代が告げられ、香川真司がピッチを退く。すると拍手の音が鳴り響いた。24日に行われたスュペル・リグ最終節、カスムパシャ戦の80分。ホームで行われたベシクタシュの今季最終戦は、つまり、香川にとってもラストマッチだった。

 今冬にボルシア・ドルトムントから半年間の期限付きで加入した日本人MFが、来季もベシクタシュに残ることはない。そう考えているから、ファンは別れを惜しみ、拍手を送ったのだろうか。そもそも買い取りオプションが付いていないことや、完全移籍で獲得するにはベシクタシュに十分な資金力がない…といった情報は、ファンもどこかで目に、耳にしていておかしくはない。

 もっとも、その音の響きは、万雷とまで形容できるものではなかった。前節、ガラタサライがスュペル・リグの優勝を決めていたため、今節は完全に消化試合。客席はまばらだった。いつものように声を上げていたのは、ゴール裏の一角だけ。スタジアム全体が巨大な熱を帯びることはなかった。

 それでもイスタンブールで過ごす日々を終えようとしている香川への拍手には、十分な温かみが感じられた。55分にイェレマイン・レンスと交代でピッチを後にするリカルド・クアレスマが、サイドで仕掛けてはボールを失うなど、軽率なプレーが見受けられたからか、冷たいブーイングを浴びていた光景とは対照的だった。

●次第に歌われなくなった“シンジ・カガワ”のチャント

 なぜ、香川には拍手が送られたのだろうか。このカシムパシャとの最終戦で、背番号23は先発出場したものの、ゴールやアシストといった結果を残すことはできなかった。5日に行われたガラタサライとのダービーの後で、長友佑都が「一番視野が広くて怖い選手」と形容したように、香川だけが見えているところへ展開するプレーは散見されたが、全体的にはインパクトを示すことはできなかった。周囲との連係が噛み合わない場面も見受けられ、不完全燃焼感は否めない。

 このレンタルで加入した半年間を通して見れば、14試合に出場して4ゴール2アシスト。先発出場したのは、第23節のフェネルバフチェ戦、第26節のギョツテペ戦、第29節のシヴァススポル戦、そしてこのカスムパシャ戦の4試合に留まった。

 フェネルバフチェ戦では1アシストを記録したが、ドルトムント時代のように、ライバルとのダービーで決定的な仕事をすることはできなかった。優勝の行方を賭けたガラタサライ戦では、長友が胸をなでおろした15分間の出場に留まっている。

 もちろんデビュー戦となった第20節のアンタルヤスポル戦での2ゴールや、第25節目のコンヤスポル戦で勝利を手繰り寄せたAT弾などは、ファンにとってもインパクト十分だっただろう。しかし、しばらくゴールが途絶えると、“シンジ・カガワ”のチャントは次第に鳴りを潜め、すっかり歌われなくなってしまった。

 ボルシア・ドルトムントだけでなく、マンチェスター・ユナイテッドにも所属したあのカガワがやってきた…加入時の熱狂的な歓迎を思えば、当初の期待がいつの間にか失望に変わっていたとしても、何ら不思議ではない。

●ベシクタシュでの経験が財産に

 それでもカスムパシャ戦の80分、ピッチを退いて、ベシクタシュを後にする香川に、拍手が送られたのだ。「ありがとう、お疲れ様…」。労をねぎらうかのような音が、すっかり夜も更けたボーダフォン・パークに鳴り響いた。

 香川がベシクタシュで示したパフォーマンスと残した数字で、今夏、どこからどれだけのオファーがあるかは分からない。ネガティブな見方をすれば、シェノル・ギュネシュ監督の信頼を掴みきれず、先発に定着し切れなかったが、ポジティブな見方をすれば、548分間プレーして4ゴール2アシストの数字を残したということは、およそ90分に1回、つまり1試合に1回は決定的な仕事をしているということになる。

 将来のことは神のみぞ知るだが、いずれにせよ、ドルトムントで出場機会を失った香川が決断を下し、ベシクタシュに飛び込んだことは、決して無駄ではなかった。真意はともかく、カスムパシャ戦の80分に送られた拍手は、その証左となるのではないか。

 イスタンブールで過ごした日々が、サッカー選手としてだけでなく、1人の人間として、得難く貴重な人生の財産となったことを――。

(取材・文:本田千尋【トルコ】)

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最終更新:5/25(土) 12:14
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