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「薬物依存の生々しい実態を知って」 ジュリア・ロバーツの思い

5/25(土) 17:00配信

文春オンライン

 100万ドルのスマイルは健在だ。最新作『ベン・イズ・バック』で、ジュリア・ロバーツは悩める中年の母を演じているのだが、たまに笑顔のシーンがあると、相変わらずのパワーに衝撃を受ける。映画スターでありつつ実力派の役者でもある人は、ハリウッドでも稀。とくに女優の賞味期限は短いと昔からよく言われてきた。だが、彼女は、そんな伝説さえ切り捨てる。

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「ある年齢になったらベルが鳴って『はい、あなたは退場』と言われるわけ? それはないでしょう。ただ、自分が幸運だったとは認めるわ。私はいつも、自分が本当にやりたい仕事をやらせてもらってきた。それも、30年も。それはとても長い時間よ」

『ベン・イズ・バック』も、強い情熱を感じる作品だった。タイトルにあるベンは、薬物依存症のティーンエイジャー。この問題は、ロバーツ自身の身近にも存在してきたものだ。コカイン所持の逮捕歴がある兄エリックとは、それが理由で険悪な関係に陥り、兄の離婚時には姪の親権を元妻が取れるよう肩を持った。異父妹も5年前に薬物の過剰摂取で自殺している。

 映画の中でベンが依存するのは医師の処方箋による処方薬。スノーボードで怪我をして医師が大量の鎮痛剤を出したことがきっかけで依存症に陥った。これは誰にでも起こり得ることだけに、より大きな悲劇で、アメリカでは近年社会的な問題になっている。

薬物依存症の生々しい実態

「この問題は、最近では統計学的に論じられるようになってきた。でも、この映画は、何人が苦しんでいるかという情報ではなく、その生々しい実態を認識してもらう機会を提供しているの。依存症の人がいることで家族に何が起こるのか。それを家族全員の立場から見つめているのよ」

 更生を誓うたびに挫折するベンと、そんな息子を絶対に見捨てない母。ピーター・ヘッジズ監督は「母の愛にはかなわない」と語るが、ロバーツは「男親にはわからないということではないわ」と、これまた切って捨てる。その一方で、貧困シングルマザーだった自らの母との間には、特別な愛の絆があるという。

「私はいつも母を尊敬してきた。でも、自分自身が母親になって、『ママはどうやって仕事と両立できたの?』と尋ねて、『保育園に預けただけよ』と言ってくれた時には、もっと好きになったわ。私の方がずっと恵まれた状況にあるのに、『あなたが何を言うの』なんて言わなかったから。大変なのはみんな同じ。自分にできる中で最善を尽くせばいい。理想を保っていられる魔法なんてないの」

 それはまさに仕事と子育てに悩む人への魔法の言葉。100万ドルの輝きを持つのは、笑顔だけではないのだ。

Julia Roberts/1967年米国生まれ。4歳のときに両親が離婚。リチャード・ギアと共演した『プリティ・ウーマン』(90年)が大ヒット、スターの座をつかむ。『愛がこわれるとき』『ノッティングヒルの恋人』など数多くの映画に出演。2001年、『エリン・ブロコビッチ』でアカデミー賞主演女優賞を受賞。

INFORMATION

『ベン・イズ・バック』
5月24日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開
https://benisback.jp/

猿渡 由紀/週刊文春 2019年5月30日号

最終更新:5/25(土) 17:00
文春オンライン

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