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米中対立、中国政府が次に仕掛ける「7.0の攻防」の危ないシナリオ

5/25(土) 8:00配信

現代ビジネス

絶対防衛ライン

 5月17日のロイター報道は「中国人民銀、1ドル=7元超える元安は容認せず」と題し、人民元相場に関し、中国当局者が「1ドル=7.00元」を絶対防衛ラインと見做しているとの関係筋談話を報じている。

 5月に入ってからの米中貿易戦争激化に合わせて人民元は対ドルで一方的に値を下げており、そこに追加関税の悪影響を相殺したいという意図を読み取ろうとする向きは多い。なお、5月下旬に入ってからもドル/人民元相場は年初来安値水準での推移が続いている。7.00を巡る攻防戦は昨年11月にも見られ、ここでは相応の実弾(為替介入)まで投じた中国の防衛政策が辛うじて奏功し、ぎりぎりのところで7.00を守り切った経緯がある(以下図)。

 今回のロイター報道で紹介されている関係筋も為替介入や金融政策手段を通じて「1ドル=7元」を超える元安を阻止するとの考え方を披露している模様で、具体的には「現時点では、7元を超える元安を容認しないことは確実だと思う」、「7元を超える元安は、関税引き上げの影響を一部相殺できるので、中国にとってメリットはあるが、人民元の信認に悪影響が及び、資金が流出する」といった発言を紹介している。

 こうした見方は標準的なものだが、①すでに米国の対中輸入2000億ドルについて25%の関税が発動されていること、②残額の約3000億ドルについても25%の課税が検討されていること思えば、昨年11月時点と同程度の(7.00を超えない)人民元安が中国経済にとって十分な防波堤になるのかどうかは定かではない。

安全に通貨安誘導が「できる国・できない国」

 少なくとも昨年11月時点ではまだ25%は600億ドル部分のみで、2000億ドルについては10%、残額についての課税は議論の俎上にも上っていなかった。しかし、当時よりも中国および世界成長は減速している。単純に中国の実体経済が浮揚するために「求めたい元安水準」を考えた場合、当時よりもさらに安いところにある可能性はある。

 なお、上述の発言とは別の関係筋のコメントとして人民銀行は「ファンダメンタルズ要因による1ドル=7元までの元安であれば問題視しないが、投機的な空売りは防ぐ意向」を抱いているという指摘も紹介されている。

 しかし、為替に振り回されてきた日本人が痛感するように、自国通貨が政策当局の思い(希望)とは逆に振れる場合、それがファンダメンタルズから見て正しいのか、それとも単に投機的な取引によるミスプライシングなのかは誰も本当の答えなど分からない。為替にはフェアバリューが無く、目の当たりにしている価格に不平不満をぶつけてもどうにもならない。

 また、今の中国はもはや世界有数の経常黒字国という立ち位置ではない。旅行収支赤字の拡大を背景に経常黒字は激減しており、IMFは2022年の赤字転落を予想している。昨年(2018年)は1~3月期の経常収支が▲341 億ドルと 2001年4~6月期以来の赤字を記録したことが話題となった。

 こうした状況下、中国の対外経済部門として資本が純流出に転じやすい体質になっていることは間違いなく(上図)、「安易に元安にしたくない」という当局の思いは理解できる。だが、こうした「需給(経常収支)が元売りに傾斜しているので、安易に元安誘導するのは危うい」という考え方は、言い換えれば「需給が売りに傾斜していても、当局がその気になれば止められる」という前提に基づいているとも言える。

 換言すれば、「当局が自在に元相場を操縦できる」という前提があるとも言える。だが、「通貨安誘導ができる資格のある国」はあくまで需給が黒字の国、言い換えれば「通貨が高くなる筋合いにある国」だ。この点、中国は経常収支やこれを含めた資本の純流出入面から資格を失いつつある国だろう。であるからこそ、今、通貨防衛に問題意識が向きやすいのである。

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最終更新:5/25(土) 8:00
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