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ペットに全財産を相続させることは可能なのか

5/26(日) 11:00配信

マネーポストWEB

「ペット=家族」という認識が広まり、富裕層の中には、「ペットに財産を遺せないものか」と、考える人もいるだろう。「紀州のドン・ファン」こと故・野崎幸助氏(享年77)は、愛犬のイヴちゃんに遺産を遺そうとしたことも報じられた。世話をしてきたペットに自分の全財産を相続させることは可能なのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 今年2月、ファッション界の重鎮、カール・ラガーフェルドが亡くなり、驚いたのは彼の巨額な遺産が、すべて飼い猫に贈与されたことです。日本でも遺書に記せば、飼い猫や飼い犬に財産を与えるのは可能なのでしょうか。また、飼い主の遺産を他人に贈与することで、その人が死後もペットの世話をしてくれますか。

【回答】
 ペットに遺産相続や贈与はできません。世話ができる身寄りがいなければ、ペットの飼育を信頼できる人や施設などに頼むしかありません。ただし、遺言で飼育を義務づけて遺産を譲る(負担付遺贈)ことはできます。受遺者が義務を履行しない場合、相続人や遺言執行者が遺贈を取り消すことも可能です。

 しかし、受遺者が遺贈を断われば、実行不可能です。そこで死亡時に効力が生じる死因贈与契約を結び、飼育を約束させる方法も考えられます。これらの方法で、お金を贈与してしまうことが心配なら、費用を預ける方法もあります。

 生前、お金を預けて死後のペットの世話を委任すると、死後も効力を有する準委任契約になります。飼育に予想外の負担が発生したようなやむを得ない場合を除き、契約を解除することはできません。

 委任者の地位は相続人が相続し、飼育状況の報告を受け、しかるべき指示や違反した場合に解除もできます。ただ、この方法では預けたお金が受任者の財産と区別されていない場合が問題で、受任者等に債権者がいれば、差し押さえを受けるかもしれません。

 この点を考えると、信託の利用が効果的です。信託受託者に財産を信託しておき、そこからペット飼育者へ飼育費を払ってもらうやり方です。信託受託者に預けた資金は、ペット飼育のための信託財産として、受託者の財産とは別に管理され、受託者の債権者の追及を受けることはありません。

 ペット飼育が困難になれば、生前から死後も通して信託を利用できます。飼育費を実質的に負担する元の飼い主の死亡後は、ペット所有権の相続人が信託の受益者になります。受益者は受託者に信託事務の報告を求めるほか、不適正な事務運営の中止を請求できます。 とはいえ、契約は複雑なので、専門家の協力が不可欠です。

【プロフィール】1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2019年5月31日号

最終更新:5/26(日) 11:00
マネーポストWEB

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