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なぜ80年代リバイバルは続くのか? 音楽家の打席と打率、フリッパーズ・ギターの魅力と秋元康の「プロデュース力」【西寺郷太のPop’n Soulを探して】

5/26(日) 12:20配信

FINDERS

(この記事は2018年12月20日にFINDERSにて掲載されたものです)

ミュージシャン、西寺郷太さんとFINDERS編集長米田の音楽をめぐる対談連載、第4回は、80’sリバイバルの話題から始まり、90年代、渋谷系と言われた音楽シーンの頂点に立っていた元フリッパーズ・ギターの二人、小山田圭吾さんと小沢健二さんについて、さらにアイドル界で長らく頂点に立つAKB48について語り合います。

80年代の音楽は味噌汁みたいなもの

米田:ところで、80’sリバイバルみたいなものってずっと続いてるじゃないですか。日本だけじゃなく海外でも。なんでこんなに賞味期限が長いのかなあって思うんですよ。

西寺:これは最近、ワーナーの人から聞いたんですけど、AORのCDってずっとコンスタントに売れているそうなんですね。アダルト・オリエンテッド・ロック、って言い方は日本だけだという話もありますけど、比較的ソフトでグルーヴィーで複雑なコードを使った「大人」に向けた音楽ジャンルですね。で、AORとか80’sのまあまあ知られてるぐらいの洋楽アーティストって、動かしやすいというか、こんな企画があるんでって頼んだら大体やってくれるからブームが続くんだって言ってましたね。たとえば、ドーム・クラスでやるような、マドンナとかプリンスとかマイケル・ジャクソンぐらいの人気になると海外のスタッフとの権利関係が難しくて日本のレコード会社も動かせないんですね。世界中から独自の企画が持ち込まれて、どちらにしても一定数売れるから「全部ダメ」って感じにしてて。そこにはメガ・スターであっても意外に信頼できるスタッフが少ない、っていう事情もあると思うんです。日本みたいに「事務所」っていう概念があまりなくて。有能な弁護士をマネージャーとしてアーティスト自身が雇うっていうケースが多いんですけど、割と掛け持ちしてたりするんですね。なので、ともかく高飛車というか。どう考えてもやった方がいいプロモーション案や、日本語の対訳や解説すら「つけないで」っていうケースも最近増えていて。だけど、たとえばボビー・コールドウェルくらいの適度にコアなファンとライトなファンが混在しているミュージシャンの場合、日本で根強い人気があるからイベントで歌って欲しいんです、って頼んだら、結構小刻みに動いてくれるみたいなんですよ。ボビー・コールドウェルは、あくまでも例えですが。そういう小刻みな企画が手榴弾になって常に爆発し続けてるっていうのもあるんじゃないですかね。日本でも海外でも。

米田:なるほど。あとはその、80’sとひとくちに言っても、AORとかシティポップみたいなものだけじゃなく、ユーロ・ビート的なものだったりテクノ・ポップだったり、ジャンル的にもいろいろあるし、たとえば、82年の音楽と87年の音楽では同じ80年代でもニュアンスが変わってくるじゃないですか。僕らが子ども時代を過ごした80年代って本当に音楽的には豊作だったんですよね。

西寺:僕にとってはね、80年代の音楽は味噌汁みたいなもんで、「なんで味噌汁好きなんですか?」って言われても、いやいやちっちゃい頃から飲んでたからしょうがないっていうぐらいの理由なんですよ(笑)。だから他の年代より優れているとか、あの時代は良かったみたいに思っているわけじゃなくて。自分がそういう時代に子どもだったし、すべてが新鮮だったなぁ、って。そういう気持ちで。あと、92年に上京してきて、90年代のプロになった97年くらいまでは、本当に80年代の音楽や、良しとされていたセンス全般が忌み嫌われてたんですよね(笑)。

米田:あーそれ凄くわかります。90年代になると、80年代の音楽や音質は非常にダサいものととらわれていましたよね。

西寺:だから、僕は意地になっていた部分もあります。マイケルも酷い扱いでしたし。でも色々時代によって状況が変わってきて、ここ10年以上は80’sの音楽を考えることが仕事みたくなってるから。マイケルが亡くなった2009年から2年間くらい本を2冊執筆したり、マイケルとジャクソンズのライナーノーツをすべて書いたり、講演したり、テレビに出たり、すごくメディアに呼ばれたんです。その時は、全身全霊マイケル尽くし過ぎて。でも、プライベートでは、ボブ・ディランばっかり聴いてました(笑)。そもそも「80’s信仰」が根っこにあるにはあるんですが、たとえばスターシップの「シスコはロック・シティ」みたいなね、ああいうレコード会社によって「計算され尽くして生まれたヒット曲」ってのはもともと好みじゃないんです。あくまでも好みの話ですよ。僕が好きなのは、マイケルとかプリンスが持つヒットはしているけれど、本質的には「歪(いびつ)」な楽曲なんですよね。作りに「合議制的妥協」が見えないのが好きなんです。プリンスの「ビートに抱かれて」は、ベースがないとか。なんでないの?って。普通の会議室で生まれた感性ではなくて、ひとりの天才が勢いに乗って作っためちゃくちゃストレンジな曲が結果的に1984年全米で一番売れたシングルになった、っていう部分が痛快で。

マイケルにしたって、なんであんなに「アオ~ウ!」とか「ダッ!!」とかいうのかわからないじゃないですか(笑)。アルバム『BAD』なんてめちゃくちゃ変ですしね。オリジナルな感性の塊というか。当時の音楽評論家も軒並み低評価でしたし。わけわかんないレベルのものをワガママ通して作って売りまくって、非難と冷笑されまくって、その上30年経って「やっぱり凄いなぁ」と、そういう世界が好きなんですよね。なので、「ベストヒット’80s」みたいな、80年代のナンバーワン・ヒット曲を集めた洋楽のコンピが出ても、並んでる曲添加物まみれでほぼ好きじゃないんですよ(笑)。むしろ、アルバムから4枚目くらいのシングルで切られて、一番味わいがあったりアンニュイな曲が好きですね。ワム!の『メイク・イット・ビッグ』だったら「エヴリシング・シー・ウォンツ」、フリートウッド・マックの『タンゴ・イン・ザ・ナイト』は「リトル・ライズ」とか。どうしても一アーティストで一曲の代表曲を入れようとすると作りのド派手な曲が選ばれちゃうんですけどね。あと、なぜ80’sのブームが続くのかっていう意味でいうと、80年代も初期と中期と後期では全然違うから、そういうのがぐるぐる回ってる可能性もありますよね。

米田:で、やはりなんだかんだで僕ら団塊ジュニアってMTV直撃世代じゃないですか。小学校の高学年とかに日本でもMTVの放送が日本でも始まって、それこそニューロマンティックとか、マイケル、マドンナ、シンディー・ローパー…そこでたくさんの洋楽と出会っていった世代ですけど、そう、同時にテレビで「ザ・ベストテン」も観て、アイドルや歌謡曲にも夢中になってましたよね。

西寺:ですよね。MTVも「ザ・ベストテン」も、めっちゃ観てましたよ。

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最終更新:5/27(月) 10:14
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