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まずは犬に聞け! 初対面で効く会話術=相手を見ない「犬の散歩式」

5/26(日) 8:10配信

NIKKEI STYLE

《連載》梶原しげるの「しゃべりテク」

私が犬と散歩に出かける緑道は、朝から夕方遅くまで、犬の散歩をする人が途絶えることがほぼない。朝早くには出勤前に、日が落ちてからは帰宅後に愛犬を連れ出すマッチョなビジネスマン風が目立ち、午前中から昼間にかけては「定年世代のおじさま」が、午後から夕方にかけては「主婦風のおばさま」が多くなるという印象だ。

私は定年世代に属するが、散歩の時間を定めず、テキトーに出掛けているので、マッチョさん、おばさま、定年世代男性それぞれの「散歩の流儀」を目の当たりにすることができる。

散歩中、うちの犬(黒いトイプードル、名前はレオ)は人なつこい性格だから、どなたのどんな犬にもうれしそうにしっぽを振りながら「満面の笑み」でにじり寄ろうとする。これに対する反応が三者三様で興味深い。

マッチョさんの多くがワイヤレスイヤホンを耳に突っ込み、何かを聞きながら早足に通り過ぎていく。レオの付け入る隙はまるでない。マッチョさんもワンちゃんも忙しいのだろう。

■笑顔と語りかけで始まる「飼い主トーク」

「定年世代のおじさま」は皆さん、なぜか不機嫌そうな顔をしている。のんびり愛犬と過ごせる「ハッピーリタイアメント」を楽しむ空気感はゼロだ。

そういう気配を読めないレオが「仲よくしましょう、ワンワンワン」と近づこうとした瞬間、飼い主さんの何割かはリードをグイッと強く引き寄せて「らっ!」と声を荒らげる。

レオのなれなれしさに怒っているのか、誘いに乗りかけた自らの愛犬をたしなめているのかは分からないが、とにかく「おじさんの不愉快度」はさらに急上昇。とても「いい天気ですねえ」などと言っている場合ではなく、「すいません」「ごめんなさい」と謝るしかない。犬を介した、男同士のコミュニケーションは思った以上に難しい。

その点でおばさま方はまるで違う。おばさまのデフォルト(初期設定)は笑顔なのだ。良好なコミュニケーションは、何より笑顔から始まる。

■おしゃべりを拒む男性飼い主の心理

そんなおばさまが連れている犬もフレンドリーだ。レオとは長年の友人のように、じゃれ合い、ニオイをかぎあったりしている。おばさま方はその様子を目を細めて楽しんでいる。

リードをグイッと引き寄せて「らっ!」と声を荒らげる定年世代男性とは、ほぼ正反対。他人の犬にまるで無関心で、修行僧のような顔をして通り過ぎるマッチョさんとも好対照だ。

おばさま方からは「他者を受け入れよう」「喜びを分かち合おう」という善意がほとばしる。「わあ、かわいい!」「おいくつですか?」「男の子さん?」「お名前は?」。こういった互いの関係を近づけるキーワードから「犬友(いぬとも)」が増えるのは、大変うれしいことと私は感じる。

「笑顔」+「軽い問いかけ」こそが円滑なコミュニケーションの始まりにふさわしい。一方で、こういうやり取りを「わずらわしい」「プライバシーに土足で踏み込んでほしくない」と感じる人だっている。

「知らない人との無駄話は避けたい」

「会社や取引先など利益につながる人ならまだしも、近所の見ず知らずの人にまで気を遣うなんて、何のメリットがあるのか?」。マッチョさんや定年世代男子がそう考えるのもおかしいことではない。

彼らのビジネスコミュニケーションの始まりには名刺交換という儀式が必要だった。学校を卒業して以来、名刺交換を伴わない人間関係には不慣れだとも思われる。逆に、名刺も交換せず、事前に相手のことを知らず、とりあえず「近所の人らしい」ぐらいで雑談を成立させるおばさま方のコミュニケーション力は賞賛に値する。

あるおばさま「いえいえ、散歩で知り合ったワンちゃんのことだとはいえ、飼い主さんに、ワンちゃんの名前、年齢、性別など、プライバシーを問いただすことについて抵抗をお感じになる人だっていらっしゃると思いますよ。そういう方への気遣いとして、飼い主さんへの問いかけを、ワンちゃんへの問いかけにする人もいますね」

私「え? なんですか、それ?」

飼い主への問いかけを、その人が飼っている犬に向けた問いにするって、なんだ?

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最終更新:5/26(日) 11:04
NIKKEI STYLE

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