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乗らずに歩いて…「鉄道事業者」鞍馬寺の願い

5/26(日) 5:30配信

東洋経済オンライン

 ケーブルカーの運行は20分ごとで、発車3分前になると、作務衣を着たスタッフが扉を開けて、「牛若号4世」に招き入れてくれる。

 スタッフが先頭に立ち、扉が閉まると出発時間となる。ほとんど音もせずスムーズに動き出す。

 わずか2分で多宝塔駅(山上駅)に到着する。そこから参道を歩き、階段を上ると10分で本殿に到着する。新緑が揺れる木々を抜けると鞍馬山が一望できる。そして、路盤の脇に広がる無数の倒木。2018年9月の台風21号の傷跡だ。

 本殿の先にある本坊には「鞍馬山鋼索鉄道事務局」の看板があり、信楽香爾(しがらきこうじ)執行(しぎょう)が招き入れてくれた。鉄道部門の責任者である。

 ケーブルカーは、信徒からの「もっと手軽に参拝したい」との声に応えるため計画された。先代貫主が運輸省や各方面と掛け合い、信徒からの献金で事業費を賄い、1957年1月から「牛若号」の運行を始めた。

 当初、利用は無料で信徒に限定されたが、他の参拝者の便乗も認めるようになった。観光客の増加で本山維持費が増えたこともあり、寄進料を求めることにした。

 現在の寄進料は大人200円。年間片道30万人弱の利用があるが、「正直、運営費にはとうてい及びません」とのこと。ケーブルカーは宗教法人における収益事業扱いとなるため、法人税などの課税対象となる。

■ケーブルカーを運営する理由

 信楽執行は「鉄道事業者として事業許可を頂戴しているため、安全にはとくに気を遣っています」と語る。毎月1回は半日運休して設備点検を行い、年に2回は2日間全休して、設計や工事を担当する安全索道(滋賀県)と総点検を実施する。

 実は1974年に廃線の危機に追い込まれたことがある。運輸局の定期監査で、ケーブルカーの道床が沈下している危険性を指摘され、12月から運休せざるをえなかった。リフト案や廃線案などの議論はあったが、参拝者の足を守るべく1億円かけて大改修に取り組んだ。レールをH鋼に、車輪をゴムタイヤにして、ロープの巻上機を新調した。「牛若号2世」は1976年1月から走り始めた。

 1996年の更新で「牛若号3世」は定員32名に大型化し、線路脇の装置から集電するシステムに切り替えた。当時、運輸局の担当者から「鉄道事業法の枠外で運行してもいいのでは」とアドバイスされたが、「国の厳しい監督があることで安全が保たれる」とケーブルカーの運行を継続した。

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最終更新:5/26(日) 10:55
東洋経済オンライン

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