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「喫煙者」差別なら許されるのか 「長崎大学」採用問題

5/26(日) 5:58配信

デイリー新潮

「煙草は、よし給え」。愛煙家で知られた太宰治の短編「美男子と煙草」には、太宰本人が喫煙中の少年たちを注意するシーンが描かれる。翻って平成の終わり、よりにもよって大の大人に「よし給え」と通告したのは国立の長崎大学。喫煙者は教職員として採用しないと発表したのだ。

「教育の場として喫煙者は相応しくない」

 大学側のコメントだが、よくもここまで断言できたものだ。

「大学の発表は先月19日のこと。すでに募集要項にも記載され、煙草を吸うかどうか、面接時に確認する。“優れた教育には心身の健康が不可欠”とし、国立大学では初めての取り組みになるそうです」(地元記者)

 さらに4日後には、同じく国立の大分大学が非喫煙者を優先的に採用する方針を明らかにし、追随する格好となった。

「大学教員は教育者であり、研究者。その能力で雇用されるべきだと思います」

 と、“煙草は吸わない”元外務省主任分析官の佐藤優氏が語る。

「喫煙という個人の趣味嗜好によって雇わないのは、豚肉やチョコレートを食べない人を採用しないというのと同じくらいばかげています。ヘビースモーカーで優秀な研究者が教員になれないなら、大学の研究の質を損なうことになります」

 その点、神奈川県の受動喫煙防止条例の制定に携わった東海大学の玉巻弘光名誉教授も同意するところだ。

「国立大学教職員は公務員に準ずる職です。その職への採用を喫煙者というだけで排除することに、合理的根拠は見出しがたく、不当差別ではないか。昨年発覚した、医学部入試における女子・多浪受験生の得点をそのことだけで一律減点していた問題と大差ないように感じます」

3次喫煙

 厚労省にこの点を聞くと、

「喫煙の有無での採用を禁じる法律はありませんが、応募者の適性や能力で採用するよう周知しています」

 と、何とも無責任な対応。

 こうした流れを助長したのが国会で昨年成立した改正健康増進法である。受動喫煙防止のため、来年からオフィスや飲食店などでも原則禁煙となる。

「そもそも、受動喫煙による健康被害の人体実験は許されず、疫学的調査に頼ることになりますが、受動喫煙量と健康被害の程度を定量化して検証することは不可能に近く、科学的エビデンスとしては弱いものです」

 と、玉巻名誉教授は指摘するが、“禁煙ファシスト”たちの主張はエスカレートするばかりなのだ。

「最近では3次喫煙といって、壁・カーテンや衣服についたたばこ残留物によっても受動喫煙被害が生じるという主張まである。ごく微量の残留物質によってどれだけ健康リスクが高まるのか。このような主張は科学的検証に堪えない、信仰告白にすぎないのではないでしょうか」(同)

 ここで“喫煙者”の声に耳を傾けてみよう。毎日1箱は空けるという経済アナリストの森永卓郎氏は、

「講演会の打診をいただいたのに、嫌煙家の主催者によって反故にされたことも一度や二度ではありません」

 と、実体験を披露する。

「海外では屋内は禁煙、屋外は喫煙可、という形で住み分けがなされているのに、日本はそのどちらも全面禁煙というところが少なくありません。この国では世界でも類を見ない“いじめ”が行われているのです」

 冒頭に紹介した短編で太宰は少年たちを注意した後、フランスの作家、ポール・ヴァレリーの言葉を引用する。

「善ほど他人を傷(きずつ)けるものはない」

 禁煙原理主義という“善”がもたらす差別。それこそ「よし給え」――。

「週刊新潮」2019年5月23日号 掲載

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最終更新:5/26(日) 5:58
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