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大学屈指のランナーは国立大医学生。卒業後は医者に、しかし未練も……。

5/26(日) 17:31配信

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 「こんなに大きな大会で走るの、初めてだな」

 山夲悠矢はそんなことを考えながら、800mのスタートラインについた。

 レーンは大外、10レーン。

 見回せば、日本記録保持者の川元奨(スズキ浜松AC)や、世界レベルのケニア人選手の姿も目に付いた。記録の面で言えば、山夲よりもはるかに実力のある選手たちだ。

 それでも、最初は面食らった大規模な会場の雰囲気にも少しずつ慣れ、意外に緊張もしていない。ホームストレートの向かい風の強さこそ気になったが、それも気負いにつながることはなかった。

 山夲の練習はいつだって、1人きりだ。

 その時に比べれば、こんな大きな会場でみんなで走れるレースなんて、こんなに楽しいことはない。そんな考えが、気持ちを落ち着かせてくれた。

 号砲が鳴る。

 山夲はすかさず先頭に立つと、レースを引っ張っていった――。

海外勢を引っ張る大役。

 5月19日に大阪・ヤンマースタジアム長居で、陸上競技のゴールデングランプリが行われた。この大会は、国際陸連主催の年間シリーズ「IAAFワールドチャレンジ」のひとつで、各種目に世界ランキング上位の選手が出場する。

 日本のみならず世界中の一流選手が集うハイレベルな大会であり、例年、記録的にも好タイムが出ることが多い大舞台なのだ。

 そんな国際規模の大会の男子800mに、ペースメーカーとして出場したのが冒頭の山夲だ。当日のレースについては、こう語る。

 「やっぱり決められたペースがあると言っても、イーブンペースで通過した方が当然、走りやすいんです。だからそこは意識して引っ張りました。今日はバックストレートが追い風だったんですけど、そこで変にペースを上げずに400mを51秒での通過だったので、いい形で、スムーズにできたと思います」

 ペースメーカーとしての参加とはいえ、日本記録をはるかに上回るタイムをもつ海外勢を引っ張り、記録をアシストするには大きな責任と確かな実力が求められる。山夲は昨季学生ランキング上位のタイムを持ち、昨年の福井国体でも8位に入賞するなどの実績が評価され、今大会の大役を任されることになった。

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最終更新:5/26(日) 17:31
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