ここから本文です

【張本勲の“喝”】巨人・原監督は着実に名監督・大監督の階段を上っている/張本勲コラム

5/27(月) 10:59配信

週刊ベースボールONLINE

 混戦となっているセ・リーグだが、令和の時代をセ・リーグ首位で迎えたのは巨人だった。11連勝した広島に首位の座は明け渡したが、何とか食らいついている。4年連続で優勝を逃したチームは、オフになりふり構わぬ補強を行った。とやかく言われることもあったが、チームが強くなるために手を打つのは当然だ。その中でも一番大きな“補強”が原辰徳監督の復帰だった。

 原監督は爽やかで見た目をいいから、周囲は「若大将」などと呼んでいるが、実はいい意味でなかなかしたたかなところがある優れた指揮官だ。父親の原貢さん(元東海大、東海大相模高監督)も非常に厳しく、そして野球のうまい指揮官だった。そんな父親の姿を見て育ったことが、原監督の根幹になっていることは確かだろう。

 その上で、選手を見る眼力に優れ、何より言葉が巧みで話がうまいから、選手たちを説得することができる。今の巨人は戦力がさらに厚くなる一方で選手たちの役割が重なり、生半可な監督では使い分けが難しくなるところだ。しかし、その状況を逆手に取るようにチームに刺激を与えている。もともとやり繰りのうまいタイプだったが、さらに磨きがかかっているようだ。

 5月6日には不振に陥ったゲレーロとビヤヌエバを同時に二軍へ落とし、中継ぎ右腕のアダメスと内野手のマルティネスという育成出身の若い2人で外国人枠を埋めた。大金を払って獲得した外国人であっても、ダメなものはダメだとはっきり言うことができる。そうかと思えば5月半ばに今季初の4連敗を喫すると、ゲレーロの昇格を含め一軍と二軍で一気に6選手を入れ替えた。二軍の選手にはこれ以上ない発奮材料になるし、一軍の選手にも良い緊張感が生まれるだろう。

 野球人としてのアイデアも豊富だ。開幕からの連続試合出塁記録で長嶋茂雄さんや王貞治を抜いて巨人の球団記録を更新しただけでなく、リーグ記録の36試合まで伸ばし、5月になって一時リーグの三冠王に立った坂本勇人を二番に置いているのもその一つだ。二番に強打者を置く「二番最強説」を最初に唱えたのは西鉄時代の三原脩監督だった。三原さんは球界きっての豊富なアイデアの持ち主だ。二番最強説だけではない。今、「新しい野球」のように言われている作戦の多くを、この人は試みたことがある。

 当然、原監督も三原野球を勉強しているのだと思うが、独自の新たなアイデアも持っている。ピッチャーの先発ローテーションというのは当たり前のものになっているが、キャッチャーのローテーションというのは初めて確立することになるのではないか。今、巨人には7人のキャッチャーがおり、そのうちの3人、炭谷銀仁朗、小林誠司、大城卓三をまるでローテーションさせるように起用している。

 なぜ、そんなことができるのかと言えば、監督としての眼力が確かなことを選手たちに示しているからだ。4月に小林は2度、4安打3打点とバットで活躍を見せて勝利に貢献した。しかし、いずれも次の試合でマスクをかぶったのは炭谷だった。4安打した次の試合で先発を外されれば、普通なら選手は「なぜ外されなければならないのか」と怒るだろう。だが、そこは説得する力のある原監督が小林に理由をしっかりと説明しているはずだ。小林の打撃は長続きする類のものではないと判断しているのかもしれない。何より、代わりにマスクをかぶった炭谷が見事なリードでチームを勝利に導いている。

 こうした積み重ねによって、選手は「うちの監督は見る目がある。すごいな」と思うようになり、信頼を寄せていくのだ。

 ある球団などは、監督が二軍時代にかわいがっていた選手を一軍でも起用し続けていたため、周囲の不満が募っていったという。しかも練習は嫌い、結果も出ないとなればなおさらだ。選手は監督のことをよく見ている。何より賢い。監督が選手の信頼を失うようなことを続けていれば、「うちの監督はダメだ」ということになってしまう。

●張本勲(はりもと・いさお)
1940年6月19日生まれ。広島県出身。左投左打。広島・松本商高から大阪・浪華商高を経て59年に東映(のち日拓、日本ハム)へ入団して新人王に。61年に首位打者に輝き、以降も広角に打ち分けるスプレー打法で安打を量産。長打力と俊足を兼ね備えた安打製造機として7度の首位打者に輝く。76年に巨人へ移籍して長嶋茂雄監督の初優勝に貢献。80年にロッテへ移籍し、翌81年限りで引退。通算3085安打をはじめ数々の史上最多記録を打ち立てた。90年野球殿堂入り。現役時代の通算成績は2752試合、3085安打、504本塁打、1676打点、319盗塁、打率.319

写真=Getty Images

週刊ベースボール

最終更新:6/15(土) 19:55
週刊ベースボールONLINE

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週刊ベースボールONLINE

株式会社ベースボール・マガジン社

野球専門誌『週刊ベースボール』でしか読めない人気連載をはじめ、プロ野球ファン必見のコンテンツをご覧いただけます。

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事