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ベッド数は1000床!CTスキャンなど最新の医療機器が揃った「病院船」って知ってる?

5/27(月) 6:11配信

@DIME

日本に病院船ってあるの?

2019年5月24日に『空母いぶき』(小学館ビッグコミックス連載中)が実写映画化されました。

原作コミック内で、中国の病院船『岱山島(ダイシャンダオ)』の陰に隠れた艦船を自衛隊が攻撃出来ない場面が登場(詳細は皆さんでご確認下さい)しますが、今回は「知られざる病院船」についてご紹介します。

★写真入りの記事は下のリンクから読めます

【「病院船」とは何か?】
世界初の「病院船」は紀元前431年古代ギリシャ帝国で生まれたようですが、ジュネーヴ条約に基づき、外観上の規定や武力行為に加わらないなどの制約のもと、戦時下でも攻撃を受けないことを保証された船です。

日本初の「病院船」は日清戦争の『神戸丸』です。デートスポットで知られる横浜・山下公園の『氷川丸』も、太平洋戦争中に「病院船」として活躍しました。

現代の「病院船」を陸の病院と比べると、東京都内にベッド数1000床クラスの病院は7つほどしかないことから、規模や大きさを想像してみて下さい。

【超巨大病院船「マーシー」って何?】
2018年6月アメリカ海軍『マーシー』が東京大井ふ頭に入港し、政府や医療関係者と懇談が行われた際の内閣府報告書やアメリカ海軍HPなども参考にその姿に迫ります。

船の長さは横浜ランドマークタワーとほぼ同じ272mで、かなり巨大ですね。
『マーシー』は1976年建造の石油タンカー改造船で、母港カリフォルニア州サンディエゴで主に太平洋側を担当(コンフォートは母港メリーランド州ボルティモアで大西洋側を担当)、2035年まで運用される予定です。

「船頭多くして船山に上る」ことが無いよう、ミッションコマンダー(海軍軍人)の指揮下に医療面と航行面の各責任者(病院長:医師、船長)が配置されます。

戦闘や人道支援など任務が発生すると「乗組員36人(通常)→90人、医療従事者59人(通常)→350~1215人」と人員が増えます。医療従事者を含め、基本的に軍人や元軍人で構成されています。集中治療室(ICU)88床、脳外科から産婦人科まで幅広い治療が行えます。一般病室は簡素な跳ね上げ式2段ベッドで、寝台列車に似ています。レントゲンよりも細かい病変を発見できる「CT(コンピュータ断層撮影装置)」が1台あり、総合病院並みの設備です。手術室は、揺れが少ないように船体中央に配置されています。

さらに最先端ロボット支援下手術システム『da Vinci(ダ・ヴィンチ)』を船内に(試験的に)搭載し「スリランカで胆石除去手術、ベトナムで婦人科手術」を実際に行いました。

『ダ・ヴィンチ』は、ロボットアームの先端に3Dカメラや電気メスなどの器具が付けられ、執刀医は画像を見ながら手元のコントローラーで手術をします。アメリカ本国から遠隔治療が行えること、お腹などを開ける手術に比べ患者の身体への負担が少ないことから、日本でも注目されている技術です。

陸上と同じ医療技術や機器を船上に取り込み戦闘などに対応すること、諸外国への医療(人道)支援を通じ、アメリカの高い医療技術を周知することも「病院船」の役割と位置付けられています。

【日本に病院船ってあるの?】
現在日本に正式な「病院船」はありませんが、11隻(海上自衛隊の護衛艦など9隻、海上保安庁巡視船2隻)の「準病院船」を保有しています。

巡視船としては大きいのですが、他国「病院船」と比べると小さいです。1995年(平成7年)阪神淡路大震災で陸上施設に被害が及んだ教訓から、災害対策本部機能を盛込み建造された「災害対応型巡視船」です。

船内には多目的に使える大小会議室があり、乗組員以外に被災者や医療関係者など120名を収容・宿泊が出来ます。2011年(平成23年)3月11日の東日本大震災では、3月20日に飛行甲板(船体後方)からヘリが飛び、南相馬市立病院の患者8名と医師3名を新潟市民病院に搬送しました。ただし常に救急対応医師が乗船している訳ではありません。
船内の医務室です。2台の手術台(+病室ベッド2台)、レントゲン撮影室、血液検査器があり、応急手術にも対応できます。

CTはありませんが、臓器出血などを診察できる「超音波診断装置(エコー検査)」を備えています。エコー検査は人間ドックなどで受けた方もいるかもしれませんね。超音波は骨で反射してしまうので脳内出血など頭部外傷は確認できません。もし『巡視船いず』が「病院船」として、『空母いぶき』に登場したらどうなるでしょう?

治安維持用の小銃などを除き、他者を攻撃する武器を持たないことで安全を保障されているのが「病院船」です。船首前方に機関砲を備える『巡視船いず』は、傷病者を乗せていても、最悪の場合攻撃を受けてしまうかもしれません。

【世界で日本だけの「洋上救急」とは?】
四方を海に囲まれ、領海+排他的経済水域(領土面積の約12倍)、日米SAR協定(海上での捜索や救助に関する協定)がある日本は、日本船に加え外国船の乗組員・乗客のケガや病気にも対応する必要があります。医療機関だけではとても対応できませんね。
1985年(昭和60年)から日本水難救済会(公益社団法人)が行う「洋上救急」は世界唯一、日本だけの取組みです。
洋上から要請があると、海上保安庁・海上自衛隊・航空自衛隊の艦船、ヘリ、航空機・飛行艇などに、患者の病状に合う技術を持つ医師達を病院から搭乗させ、救急処置を行いながら、全国の医療機関に搬送し専門的な治療に繋げます。「医療や官公庁など異なる組織を結び、迅速な治療」を行い、900名以上を救助しています。

実際の事案では、1人の傷病者を助けるために海上保安庁と自衛隊が共に出動することもありました。

TVに登場する「ドクターヘリ」に少し似ていますが、「ドクターヘリ」は飛行範囲が約50~70kmと短く、海上の長時間飛行や揺れる船舶に着陸することは難しいです。巨大な「病院船」は災害の危険がある日本では心強い存在ですが設備に加え、医師はじめ医療従事者の確保など課題もあります。

陸上自衛隊には、コンテナ内に医療設備があり必要に応じて野外臨時病院(陸上や艦船上)を展開する「野外手術システム」を装備しています。2016年伊勢志摩サミット会場近くに実際に展開し、自衛隊や民間病院スタッフと共に、テロなど不測の事態に備えていました。様々な組織や機材を活用することがますます重要になってくるのかもしれませんね。

取材・写真協力: 公益社団法人 日本水難救済会、米田堅持(写真家)

取材・文/ 倉田大輔(池袋さくらクリニック 院長)

@DIME編集部

最終更新:5/27(月) 6:11
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