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求愛に錯覚利用か 踊るピーコックスパイダー

5/27(月) 7:10配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

光を99.5%も吸収するスーパーブラックを使って、鮮やかな体色を際立たせる

 ピーコックスパイダー(孔雀グモ)はハエトリグモの仲間だ。大きさは指先ほどしかないが、愛嬌のある顔、凝った求愛行動、忍者のようなジャンプなど、いろいろな理由で注目されている。

【動画】ピーコックスパイダーのオスが見せる魅惑のダンス

 このクモの仲間は、オスが極彩色の腹部を見せつけるように振って求愛することでも知られる。オスの腹部には、青や紫、金、赤といったド派手な色が並ぶ模様がある。そして、これら鮮やかな色彩の間には「スーパーブラック」と呼ばれる真っ黒な部分がある。

 何のためにこんな真っ黒な部分があるのだろう?

 その答えが、2019年5月15日付けで学術誌「Proceedings of the Royal Society B」に発表された。2種のハエトリグモが持つ真っ黒な模様に関する論文の著者である米ハーバード大学の大学院生ダコタ・マッコイ氏は、「明るい色をスーパーブラックで縁取りすると、まったく違って見えます」と話す。

「黒は周囲の色を強調して、色彩の美しさを際立たせているのだと考えています」

ほぼ完全な「黒」

 研究チームによると、クモの腹部にあるスーパーブラックの光の反射率はわずか0.5%未満で、光を吸収してほとんど反射しない。ほぼ完全な黒と言っていい。

 クモの黒い部分の光の吸収率は、極楽鳥とならび、自然界で一二を争うほどだ。そして、極楽鳥もオスが派手な色を使って求愛行動をとることが知られている。

 マッコイ氏の研究チームは近年、極楽鳥のオスに見られる同様のスーパーブラックに関する研究を行ってきた。その結果、その黒さは、入射光の大部分を閉じ込める微細構造によるものだということがわかった。この構造が、真に黒い面を作り出すのに一役買っている。

 さまざまなピーコックスパイダーが8本足で行う求愛ダンスの動画を見たマッコイ氏は、こう考えた。体色を区切る黒の模様は、極楽鳥と同様のメカニズムによるものではないか、と。

「ピーコックスパイダーの模様にも、極楽鳥のように明るい色の近くに黒い部分があることに気付きました。全く異なる動物が、類似の生態をもち、同じ視覚効果を利用するように進化したのだとしたら、自然はどれほどすごいのだろうと思いました」と同氏は話す。

 同氏の研究チームは、オーストラリア原産の2種のピーコックスパイダー、Maratus speciosusとMaratus karrieの模様を詳細に調べた。電子顕微鏡で観察したところ、両種ともに、スーパーブラック領域の表皮にはこぶが並ぶ層があり、その下に黒い色素であるメラニンが点在していることが明らかになった。

 黒くない腹部をもつクモと比べて、スーパーブラックをもつクモの腹部の表皮のこぶが光にどう作用するかをシミュレーションした結果、このこぶにはマイクロレンズのような働きがある可能性が高いとの結論に至ったという。このマイクロレンズが光をメラニンに集めて反射をなくす。こうして、反射がほとんどないスーパーブラックを作り出している。

 M. karrieのこぶのレンズの上には細かいブラシ状の鱗のような層があり、鳥の小羽枝と同様の機能をもつのではないか、と研究チームは考えている。

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