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今生のための必然から完成した、椎名林檎の『三毒史』:【前編】

5/27(月) 21:03配信

フィガロジャポン

常にリアリティある、市井の民の暮らしを描くよう心がけています。

――アルバムとしてまとめていく時に、タイアップで書いた曲をどうはめ込んでいくかは難しいですよね。GINZA SIXのオープニングテーマソングの「目抜き通り」や「news zero」のテーマ曲の「獣ゆく細道」を発表する時も、“三毒”というアルバムの路線は意識していたわけですよね?

S:そうですね。

――「目抜き通り」のイントロの死生観を語ったセリフが素晴らしいです。「木を見て森を見ず」という諺がありますけど、あの歌は「木を見て森を見る」、つまり銀座という木を見ながら、人生という森を見ているという。どういう意向から前振りを書いていったのですか?

S:なつみさんの言葉をお借りすると、いつも木と森の関係性を描くことこそが自分の仕事だと自覚しています。商業施設のテーマソングだろうが、報道番組のエンディングだろうが、人々の生々しい人生が関わってこないことには、そもそも商いとしてニーズがないと裏付けることになるので、常にリアリティある市井の民の暮らしを描くよう心がけています。

――「長い短い祭」も名曲ですが、その歌詞にある“走馬灯”であったり、「獣ゆく細道」で“蜉蝣”であったり、それぞれの歌で人生観や死生観を想起させる言葉をティップ(ヒント)としてポン!と入れているのが毎度ながら私にとってツボで、そのツボは言葉遊びもそうなんですけど、今回はより的確でわかりやすくて、それが方向性としてアルバム全体を覆っているので、聴きやすいのかな、とも思いました。

S:うれしいです。

――その辺りも意識しました?

S:どうでしょうね。最大公約数の人生に当てはまる言葉を選ぼうとか、音楽の素養がない方にも親しんでいただきやすいコード感にしようとかは考えません。むしろ私が好きな「気にしいで、礼節を重んじていて、しかし高い理想があるあまり反骨精神も旺盛で……」っていうようなイメージの女性だけに届いて欲しいと願いながらいつも書いています。イメージしているリスナーがいるから、はなから選択肢があんまりない。

――イメージしているリスナーというのは何人もいるんですか?

S:うーん……、少数派の方々だろうとは思います。ともかくその女性たちの感覚が作品のフォーマットになるべきで、彼らのお気に召すものを書けさえすれば私は満足です。こちらから勝手にクライアントを狙い撃ちするスタイルです。

――そのお客さんとの関係性を歌ってみたのが、「マ・シェリ」になったという?

S:ええ。

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最終更新:5/27(月) 21:03
フィガロジャポン

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