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14億円横領事件「アニータ」夫が出所後経理職に再就職もふたたび持ち逃げか

5/27(月) 8:00配信

デイリー新潮

「一生を捧げます」

 とまれ千田氏、たいしたタマである。横領の動機も不純なら、被害の程度はジャン・バルジャンと比べるべくもない。だが、16年4月に山形刑務所を出所するまでの獄中生活は、ジャン・バルジャンよりは短いが、4847日におよんだ。すなわち14年の贖罪の日々に、出所後の“司教”との出会いが重なれば、さしもの千田氏も、世のため人のために生きる準備が整ったということだろうか。

 ところが、日本駆け込み寺の玄代表は嘆くのだ。

「千田は僕が執筆を勧めた手記に、“日本駆け込み寺の事業を通して社会に恩返しをしたい”“この地が私にとっての終の棲家となるように努力していきたい”などと書きながら、もうここにはいないんです」

 事ここに至るまでの経緯を、玄代表に語ってもらうしかあるまい。

「17年12月、千田から手紙と履歴書が送られてきて、そこには出所後の生活苦が綴られていました。岡山県に住んでみたが、なかなか仕事が見つからず、上京を考えているが助けてもらえないかと。すぐに履歴書に書いてあった携帯番号に電話すると、おどおどした声で“アニータ事件ってご存じですか。僕は有名人なんです”と話すので、あの14億円横領事件の張本人だと気づきました。でも、仕事も居場所もなく孤独だというので、ほな助けたろ、と思って、東京で会う約束をしたのです」

 さて、年明けに新宿の日本駆け込み寺の事務所で面会すると、

「やっぱり出所者特有のおどおどした話し方で、目を合わせようとせず、話しながらチラッと僕を見る感じ。引っ越し費用は出せるかと聞くと、300万円ほど貯金があるという。出所後も身内に援助してもらっていたようでした。紹介した物件に住むことを決め、僕らがプロデュースする新宿駆け込み餃子という飲食店で、3月からアルバイトをすることも決めました」

経理の仕事を得るも…

 その後は、多少の紆余曲折があったという。

「ところが、駆け込み餃子は1カ月ほどで辞めてしまいました。皿洗いもできないのでホール業務を担当していましたが、若い人にアゴで使われたりもして、キツかったのでしょう。ただ、本人は“アニータ事件のことをバラされたから”と言っているようですが、彼は酔うと口が軽くなる。僕たちは口外しませんが、初対面の人にも“僕の名前をネットで調べると出てきますよ”とか言ってしまうんです。その後、ヤマト運輸でも働いたみたいですが、左足を骨折したとかで辞めてしまい、困っている千田と10月末ごろ会いました。そこで僕は、“11月からうちで経理の仕事をしないか”と持ちかけたんです」

 人を信じる玄代表の本領発揮、であろう。

「言い方は悪いですけど、泥棒に経理を任せるなんて、とスタッフみんなから猛反対されて、実際、当時の経理と総務の社員2名が辞めてしまいました。でも、元泥棒だとマークされているからこそ、悪事ができるわけはないし、それに、普段の活動では出所者を信じて支援しているのに、自分の団体に出所者がきたら拒絶するのはおかしい、と思ったんです。罪を犯した経験があれば、悪事を防ぐことに長けているだろう、とも考えました。彼に賭けてみたんです。うちの団体は利益があまり出ないので、週4日、6時間勤務で、月10万円しか支払えないと伝えましたが、彼は“月7万5千円の年金もあるから生活できます”と。職員が2人辞めたときも、“ここに一生を捧げます。玄さんを支えます”と言ってくれていたんです」

 実際、一時は経理という元の鞘を与えられた千田氏は、水を得た魚のようだったというが……。

「働きはじめると、さすがは元経理という働きぶりで、粗さがしが上手い。千田が“万一計算が合わなくて自分が疑われるのは嫌だ”というので、金庫も用意しました。ところが、千田は3月8日以降、行方をくらまし、金庫に入っていたお金が足りなくなっていたのです」

 金庫にあるはずの約7万円がないほか、使途不明金が14万円ある、と玄代表はいうのだ。

(2)へつづく

「週刊新潮」2019年5月23日号 掲載

新潮社

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最終更新:5/27(月) 12:46
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