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なぜ「超高価な新薬」が増えるのか? 知られざる「からくり」を解説

5/28(火) 12:01配信

現代ビジネス

白血病薬キムリアの保険適用

 5月15日、血液のがんである白血病の新しい治療薬「キムリア」が、日本で保険医療の対象となった。

 治療は一回でいいのだが、その公定価格は1回で3349万3740円という。

 保険適用ということは、もし3割負担とすれば医薬品代だけでおよそ1000万円の支払いとなり、差額の2000万円あまりは医療保険から支払われる。

 日本では、所得に応じて個人負担に上限を定める「高額療養費制度」があるので自己負担ははるかに少額になる。

 年収370~770万円であれば自己負担は40万円程度という(朝日新聞5月16日)。

 医薬品と呼ばれているものの、先端医療医薬品(ATMPs)とか細胞遺伝子治療医薬品(CGTPs)と総称される治療法の一種で、化学物質ではなく、生きた細胞そのものだ。

 キムリアは、個別の患者さんに合わせて次のような手順で作られる。

 まず、患者さんの血液から採集した白血球のうちのT細胞だけを選択して凍結保存し、ノバルティスファーマ社の米国の研究所に送る。

 次に、そのT細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を遺伝子導入して、白血球のB細胞が突然変異したがん細胞だけを攻撃するように変化させて培養し、その数を増やす。

 この遺伝子導入したT細胞(CAR-T)がキムリアであり、患者さんの体内に点滴で戻すと白血病のがん細胞を攻撃する仕組みだ。

 25歳以下の再発・難治性B細胞性急性リンパ芽球性白血病と再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫というかなり特殊なタイプの白血病だけに保険適用となった。

 そもそも患者数の少ない希少疾病であり、この治療法の対象となるのは日本国内では最大で年間216人という試算もある。

医薬品価格のからくり

 「患者数も少ないし、個別に作る必要があって手間のかかる製造法のようだから、新薬はすごく高価なのだ」と思った人も多いだろう。

 だが、それは大きな誤解だ。

 新薬の価格は、原材料・製造費用に加えて、新薬の開発までに必要だったとされる研究開発費を取り戻し、さらに次の新薬を研究開発するだけの十分な利益が上がるように設定されている。

 そして、新薬を一つ開発するには1000億円必要というのが製薬企業の言い分だ。ただし、この試算は盛り過ぎとの批判も数多い。

 批判者側は、新薬のアイデアや基礎的研究は、製薬企業が遂行したものではなく、大学な公的研究機関での公費(つまり税金)による医学研究をもとにしていることが多いと指摘する(メリル・グーズナー、東京薬科大学医薬情報研究会訳(2009)『新薬一つに1000億円!? 』朝日選書)。

 その論争はさておくとして、製薬企業は慈善団体ではないのだから、患者数の少ない=市場規模の小さい医薬品に高価格をつけること自体はある意味では当然だろう。

 いま世界で問題視されているのは、こうした希少疾病用の高価な新薬が続々と開発され市場に出回りつつあることが医療経済に与える影響だ。

 たとえば、キムリアと同種類のCAR-T療法の臨床試験は、2019年5月現在、世界で749件、そのうち292件は米国、258件は中国で行われている(https://clinicaltrials.gov)。つまり今後、同じような治療法が続々と生まれてくるのだ。

この事態をもたらした理由の一つは米国で始まり、EUや日本も含めた先進諸国が取り入れている「オーファンドラッグ」の法制度だ。

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最終更新:5/28(火) 12:01
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