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東京五輪へ高まる英語学習熱 「日本のこと伝えたい」

5/31(金) 7:47配信

NIKKEI STYLE

2020年の東京五輪・パラリンピックの開催機運が高まりつつあるなか、「英語学習熱」が早くもヒートアップしている。五輪を機に大会の位置づけなどを英語で学ぼうとする学校や、大会ボランティアに参加予定のビジネスパーソンの英語力の向上など幅広い。英語学習のツールにも熱い視線が注がれている。
「食事には和食やすし、ラーメンも出したい」
「歌舞伎など日本文化に触れる機会をつくってはどうだろう」
「施設には日本の四季を感じるデザインを採り入れよう」
4月、東京五輪をテーマに、横浜市立横浜商業高校で行われた授業「選手村について英語でプレゼンしよう」の一コマだ。参加したのはスポーツマネジメント科に通う3年生の男女15人。生徒は一組3~4人のグループに分かれ、大きな白い模造紙にアイデアを書き込み、英語で発表した。
課題を提示したのは、世界で教育事業を展開するEFエデュケーション・ファースト・ジャパン(EFジャパン)の専属講師。五輪の旗の意味や外国人の食文化の違い、選手村の役割などを一緒に考えながら「どんな施設にするか議論しよう」と生徒に投げかけた。
同科の生徒は将来、スポーツだけでなく、医療や健康、スポーツビジネスに関する仕事に就くために学んでいる。部活動で心身を鍛える一方、五輪・パラリンピックの元選手の体験談などを聞いたり、競技を体験したりすることで理解を深めている。
さらに「コミュニケーションスキルとして英語を使う経験を大切にしている」と山下賢美教諭は強調する。入学時、英語が苦手な生徒が多かったが、同校国際学科の生徒との交流もいかし、英語に触れる機会をつくってきた。
今回の英語授業への参加について山下教諭は「ネーティブの講師の質問に、積極的に英語で答え、提案する生徒の姿に驚いた」という。若者ならではの好奇心と「習うより慣れろ」の精神がスキルを磨いている。
東京五輪のオフィシャルパートナーのEFジャパンでは、19年3月末までに全国の小学校から高校を中心に大学も含めて五輪に関連する英語授業を約400回行い、のべ2万人が受講した。今年度もすでに100校近くから申し込みや問い合わせがあるという。こうした東京五輪に向けた「英語学習熱」の高まりは、学校の場だけに限らない。
“Be very simple!”
日本財団が東京五輪に向けて設置したボランティアサポートセンター(東京・港)では4月初旬、仕事帰りのビジネスパーソン約30人が、外国人講師のもと、英語で道案内をするための研修を受けていた。実際の地下鉄路線図を使い、訪日客に対して主要観光地を案内するにはどうしたらいいか。講師は「とにかくシンプルに伝えましょう」と訴えた。
参加者が所属する企業はまちまちだが、共通しているのは、東京五輪でボランティアとして参加予定だという点だ。
東京五輪では、競技会場や選手村で競技運営や観客のサポートをする「大会ボランティア」として8万人を見込む。ゴールドパートナーの企業では社内から300人のボランティアを募るなど、ビジネスパーソンにとっても東京五輪が身近になりつつある。しかし「ボランティア参加の課題として挙がるのが『英語』」(日本財団ボラサポの村上紘一さん)だという。
このプログラムに参加したJTBの村上友美さん(28)も、「せっかく東京で五輪が開かれるのだから、とお祭りに参加するつもりで社内で募集されたボランティアに手を挙げた。ただ、英語を全然話せないので、一時間早く仕事を切り上げ研修に参加している」。
回を追うごとに「だいぶ聞き取れるようになってきた」と成長を感じ、以前なら避けていた外国人との英語での食事会にも積極的に参加。「五輪まであと1年。自分が言いたいことを英語で伝えられるように勉強を続けていきたい」と意気込む。
日本財団ボラサポでは、企業派遣予定のボランティアを対象に3月から隔週で全4回のEFジャパンの英語研修プログラムを行った。参加希望の声が多く寄せられていることから、5月以降も開催する予定だ。
「英語学習熱」の高まりは、学習ツールにも及んでいる。
スマートフォンの普及などで減少が続いていた電子辞書だが、18年の出荷台数が前年比8.5%増となった。増加したのは11年ぶりだ。背景には、英語学習の低年齢化とともに「東京五輪に向けて英語を勉強しようと、買い求める人も多い」(都内の家電量販店)ことが挙げられる。
「ウェブの情報は、英語に限らず信頼できないものが多い。素人にはなかなか判別できない」。そう語るのは、NHKラジオ「基礎英語」の講師を担当していた玉川大学教授で言語学者の佐藤久美子さんだ。自らもカシオ計算機の「エクスワード」シリーズを活用した英語研修を行っている。「電子辞書は信用性をスクリーニング済み。さらに複数の辞書が入っているので、一つの単語をきっかけに様々なことを横断的に調べるのに適している」と話す。
◇   ◇   ◇
英語が上達するコツを玉川大の佐藤久美子教授に聞いてみた。
まずは、基本的な文法をおさえ、語彙力を上げること。中学校3年生レベルの文法で日常会話は十分だそうだ。次に英語の内容を充実させる。「普段から日本語でよく知っている分野や自分の仕事の専門領域について英語でディスカッションするといい」とアドバイスする。「内容に精通しているので、難しい英語でも理解しやすい」と話す。
加えて「“I think”“I don’t think”といった自分の意見をきちんと持つというメンタルが大事」だと指摘する。子どもの発達研究では「日本語でコミュニケーションを積極的にとっている子どもは英語の習得も早いという強い相関関係がある」という。「自分の意見をいうと座が白ける、なんて、英語を勉強する際には言っていられませんよ」と奮起を促す。
(編集委員 木村恭子、倉品武文)
[日本経済新聞朝刊2019年5月13日付]

最終更新:5/31(金) 12:15
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