ここから本文です

互いの核実験を非難し合う米ロとともに、核軍拡が始まった

5/31(金) 17:28配信

ニューズウィーク日本版

<アメリカもロシアも、核実験を行ったことではおそらく五十歩百歩。曲がりなりにも機能してきたCTBT(包括的核実験禁止条約)が今度こそ骨抜きになる?>

アメリカ情報部門の高官は5月29日、ロシアが北極圏のへき地で極秘に核兵器の実験を行っている可能性が高いと述べ、核爆発を伴う全ての核実験を禁じた国際条約、包括的核実験禁止条約(CTBT)に違反して核戦力の増強を進めている可能性があると警告した。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、国防情報局(DIA)長官のロバート・アシュリー中将は29日、ワシントンにあるシンクタンク、ハドソン研究所でスピーチを行い、ロシアが北極圏のへき地にあるノバヤゼムリャ列島で、きわめて低出力の核実験を実施したと思われると語った。ノバヤゼムリャは、ソビエト連邦時代に核兵器の実験がしばしば行われた地だ。 

ロシアは2000年に包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准している。アシュリーの今回の発言は、アメリカが公式に、ロシアのCTBT違反を非難する初めてのケースだ(アメリカは先週、今年2月にアメリカは未臨界核実験を実施したと発表した。核爆発を伴わない実験なのでCTBT違反ではないとしている)。

<アメリカは違反していない?>

ニューヨーク・タイムズ紙によれば、アメリカはCTBTを批准していないものの、1992年から核実験を実施していない。CTBTは批准国数が足りないため発効していないが、主要国は条約を順守することに同意しているとWSJは指摘している。

アシュリーはスピーチで、「ロシアはおそらく、『ゼロイールド(あらゆる規模の核実験を禁止する規定)』基準を順守していない」と述べた。「ロシアの実験は核兵器の能力を増強させるためのものだと思われる。アメリカは、ゼロイールド基準を守って増強は差し控えてきた」

アシュリーは、実験の規模についてそれ以上明らかにせず、こう言った。「低出力核実験では爆発の威力がきわめて低く抑えられることがあるが、核爆発である限りは条約に違反する」

ハドソン研究所で行われた会合ではほかの政府関係者もスピーチを行ったが、ロシアの実験内容や規模についての詳しい情報や、アメリカが実験を知り得た方法については述べられなかったとWSJは報じている。

国務省高官のトーマス・ディナノはロシアについて、「おそらくそういう実験を行ったと思われる」と述べた。また、国家安全保障会議(NSC)のティム・モリソンは、ロシアはゼロイールド基準を守らずに核能力を高めるための「行動」を起こした、と語った。

1/2ページ

最終更新:5/31(金) 18:28
ニューズウィーク日本版

記事提供社からのご案内(外部サイト)

ニューズウィーク日本版

CCCメディアハウス

2019-8・27号
8/20発売

460円(税込)

【特集】香港の出口
拡大する香港デモは第2の天安門事件に? 中国「軍事介入」の可能性とリスク

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事