ここから本文です

<中高年ひきこもり>一橋大卒で30年ひきこもる50代男性、求め続ける母の愛情

6/1(土) 21:00配信

週刊女性PRIME

 現在、全国に100万人以上いると推測されるひきこもり。近年、中高年層が増加しており、内閣府は今年初めて、40歳以上が対象の調査結果を公表した。一般的には負のイメージがあるひきこもり。その素顔が知りたくて、当事者とゆっくり話してみたら……。

中高年のひきこもり~母からの虐待~池井多さん(56)のケース

 今年3月、内閣府は40歳から64歳までの中高年の「ひきこもり」が推計61.3万人と発表した。これは6か月以上連続して「自室からほとんど出ない」「自室からは出るが、家から出ない」「近所のコンビニには出かける」「趣味の用事のときだけ外出する」という“広義のひきこもり群”の数だ。15歳から39歳までのひきこもり54.1万人を上回り、大きな話題となっている。

 今回お会いしたぼそっと池井多さんは56歳。仲間内では「ぼそっとさん」と呼ばれているが、ここでは池井多さんと記す。中肉中背、落ち着いた風情を漂わせ、低めの声でソフトに、だが論理的で知的な話し方をする彼は、国立の一橋大学を卒業している。断続的に30年にわたるひきこもりを経験、「基本的に今もひきこもりです」と微笑(ほほえ)む。

 母親と、母に強制された父からの虐待によって、うつと複雑性PTSDを発症したことが原因だ。大人になるにつれて家族問題がこじれ、この20年近く両親と、8歳違いの弟とは没交渉、現在は体調と相談しながらひきこもり関連イベントのファシリテーターをしたり、英語やフランス語など語学の才能を活かしてネット上で欧米のひきこもりの人へのインタビューを行い、発信している。

「死んでやるから」という母の脅し

「根っこは母からの虐待ですね。心身ともにですが、大人になって振り返ると、身体的なものより精神的なもののほうが悪影響を及ぼしている。いつも同じ構造の虐待が起こっていました。私が“スパゲティの惨劇”と呼んでいる虐待があるんです」

 4歳から学校へ上がるくらいまでの話だ。夕方になると、母親が「何を食べたい?」と聞いてくる。だが、天真爛漫(てんしんらんまん)に答えられるようには育てられていない。もし食べたいものを言ったら全否定されるとわかっているから、「何でもいい」と答える。すると母は「何でもいいじゃわからない」と不機嫌になる。

「“スパゲティ食べたいでしょ?”と母親が言うわけです。“もちろん食べたい”と私は言う。父が帰ってくる時間を見計らったようにナポリタンを出してくるのですが、私は当時からグズでしたから、スイスイ食べることができない。

 すると突然、母がキレてナポリタンの皿をシンクに叩きつける。そこにちょうど父親が帰ってくる。母は“この子が食べたいって言うから作ったら、こんなもの食えるかって捨てたのよ”と言いつけるわけです。父親は“そんなことをしたのか”と言う。母親の思いどおりのストーリーが完成して私は有罪が決定する」

 私はほぼ口を半開きにしたまま聞いていたと思う。幼い子どもの気持ちを考えるといたたまれない。それだけでもすごい話なのだが、そのあとがもっと悲惨なのだ。

 母は父に「怒ってやって」と命令し、父はズボンのベルトをとって彼を鞭(むち)打つ。彼は屈辱に耐えながら、時間が過ぎるのを待つしかなかった。

「母は有名大学出身のお嬢様で、父は高卒。だから父にとって母が言うことは絶対だった。父が母を諫(いさ)めたり反発したりするのを見たことがありません。あのとき父は何を考え、感じながら私を打っていたのだろうと思いますね」

1/5ページ

最終更新:6/1(土) 21:00
週刊女性PRIME

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週刊女性PRIME

(株)主婦と生活社

「週刊女性」9/24号

定価400円(税込)

「週刊女性PRIME」では「週刊女性」本誌の一部記事のほか「週刊女性PRIME」独自の記事を読むことができます。

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事