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日本は移民国家ではないという「建前」を取り払うために知るべき「あたり前」の現状【ブックレビュー】

6/3(月) 11:40配信

FINDERS

移民とは誰なのか?―移民の定義は移ろいがち

望月優大『ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実』(講談社)は、日本は移民国家であるという前提で、複雑に入り組んだ「建前の日本」と「実際の日本」の構図を整理している。

経済産業省、Google、スマートニュースなどを経て独立した著者は、認定NPO法人難民支援協会が運営している、移民事情・移民文化を伝えるためのWEBマガジン『ニッポン複雑紀行』の編集長を務めており、本書では用語や定義の解説を織り交ぜながら、丁寧に多様な論旨が展開されている。

「国際的、学術的に定まった『移民』の定義があるわけではなく、1年以上滞在する外国人、更新回数に上限がない在留資格を持つ外国人、永住権を持つ外国人など、様々な定義がある。だからどの定義を選ぶかによって日本にいる『移民』の数は変わってしまうし、定義の選択それ自体が政治性を帯びる」 (P23)

著者は、「移民」という言葉が定義によってどれだけ人数が違うのか6段階にわけて例示している。一番範囲が狭い「身分・地位のみ(永住のみ)をカウント」の場合は108.5万人。一番広く捉えた「超過滞在者までカウント」の場合だと400万人超となる。日本政府は移民を「永住する外国人」と捉えていて、労働力不足に対応するために、本音では短期滞在の外国人労働者の受け入れを強く志向し、彼らが長期的に日本に定住することは忌避してきてきた。そして、「日本は移民政策を行っていない」という実情とは矛盾した建前が生まれた。こうした国家・企業・個人の表裏(「ふたつ」の側面)が本書のテーマとなっている。

単純労働者の、単純ではない気持ち

“ニッポンは複雑だ。複雑でいいし、複雑なほうがもっといい。”――これは前述した『ニッポン複雑紀行』のコンセプトを示すフレーズである。社会の複雑さを吟味することなく避けて通り、単純で簡単な選択を積み重ねた時、社会に「ひずみ」が生じるという。著者は、日本政府がこの2、30年で複雑さを忌避しながら行ってきた外国人労働者の受け入れの特徴について、フロントドア(就労目的の在留資格)とサイドドア(就労目的ではない在留資格)という言葉を使って解説している。

フロントドアからは専門性や技術を持った外国人のみを受け入れ、低賃金ないし重労働な業務に従事する「いわゆる単純労働者」は受け入れないと宣言する。しかし、実際日本社会は特に「いわゆる単純労働」の分野において深刻な人手不足に悩まされている。そこで、サイドドアから入って来られる外国人(日系人とその家族、研修・技能実習生、留学生など)にそうした仕事を担ってもらおうという、「ひずみ」を内包した制度が整えられた。

「外国人労働者はただ『労働者』としてのみ存在するわけではない。彼らは当然『消費者』でもあり、地域の『住民』でもあり、その子どもたちは学校の『生徒』でもある。しかし、本当はその場所、その時間に存在するはずの彼らの存在が社会の中で見えづらくなっているという現実がある」(P98)

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最終更新:6/3(月) 11:40
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