ここから本文です

浮遊性の藻類が育む「地球上でここだけの海」

6/3(月) 12:10配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

驚くほど多様な生物が隠れ場所や餌を求めて集まってくる

「大洋のど真ん中でこれほど多様な生物が育まれている場所は、地球上でここだけです」と言うのは、海洋生物学者のブライアン・ラポイント。「その理由は海藻です」

ギャラリー:クジラなど多様な生物が集まるサルガッサム

 ラポイントが話しているのは、浮遊性のホンダワラ属の海藻、サルガッサムのことで、北大西洋のサルガッソ海と呼ばれる海域で多く見られる。この海は、バミューダ諸島の近くを時計回りに流れる五つの大きな海流の内側にあり、境界がはっきりしない。陸地からは遠く、水を汚す栄養分が届かないので、海水は透明度が高くて息をのむほどの青さだ。

 サルガッサムには、驚くほど多様な生物が隠れ場所や餌を求めて集まる。ある研究によれば、サルガッサムからは122種類もの魚の仔魚や幼魚、卵から孵化したばかりのアオウミガメ、ウミウシ、タツノオトシゴ、カニ、エビ、貝などが見つかっている。一方、海藻はこうした生物の排泄物を養分としている。

 海洋学者で、サルガッソ海を世界初の公海に位置する海洋保護区にするのに尽力したシルビア・アールは、黄金色に輝くサルガッサムを熱帯雨林にたとえている。サルガッサムは海面を覆う樹冠と考えることができるので、このたとえは的を射ていると言えそうだ。「サルガッサム」という言葉から私が連想するのは、洋上を漂うサンゴ礁や大海の草原のようなもので、「海のセレンゲティ草原」と呼んでもいいだろう。

見つかった生物たちにカメラマンも驚愕

 サルガッソ海で主に見られる2種のサルガッサムは、海底に着生することなく浮いたまま繁殖する。黄金色や琥珀色をしていて、風と海流に身を任せて海を漂い、強風に遭うと固まりは崩れ、なぐと密集する。海藻の固まりは全長数キロに及ぶこともあるが、ちぎれると人間の手のひらほどしかなくなる。

 サルガッサムの大きな固まりを探して、何度も海に出てみたが、どこにも見当たらなかった。「前日までまったくなかったのに、翌朝になると湾や港が海藻で埋め尽くされていることもありますよ」と、ある年配の漁師が教えてくれた。

 運よくサルガッサムを見つけると、私たちは網ですくってバケツにより分けて海洋生物を探し、デビッド・リトシュワガーが撮影した。

 その晩、リトシュワガーの撮影に立ち会った。サッカーボール大のサルガッサムの固まりからは、900匹の仔魚、30匹の端脚類、50匹の巻き貝、4匹のイソギンチャク、2匹の扁形動物、6匹のカニ、20匹のエビ、7匹のウミウシ、そのほか、1000匹を超す石灰化生物や大量の外肛動物、微小なカイアシ、数えきれないほどの動物プランクトンなどが見つかった。「控えめに見ても、3000匹の生き物がいる」とリトシュワガーが驚いた顔で言った。

※ナショナル ジオグラフィック6月号「北大西洋の生命を育む海藻」は、驚くほど多様な生物を育んでいるというサルガッソ海の海藻「サルガッサム」を取り上げます。

文=ジェームズ・プロセック/ライター

記事提供社からのご案内(外部サイト)

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事