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“音楽には必要以上のことは求めない”次世代アイドルの曲作り――近田春夫の考えるヒット

6/3(月) 17:00配信

文春オンライン

『アッパライナ』(天晴れ!原宿)/『ブランニューパレード』(GANG PARADE)

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 編集から送られてきた資料によれば、GANG PARADEが今の名前になったのも、天晴れ!原宿が結成されたのも2016年だそうで、細かなことはともかく、なんとなく「同期」っぽい子たちなのかなァと……。そんな先入観も手伝って、CDを聴いていると、印象にはなにか共通した部分があるようにも思えてきた。それで、それは何なのかを考えていくうち、似ているのは、両者の“音楽に求めるもの”なのではなくむしろその逆、すなわち“音楽には必要以上のことは求めない”という制作上の姿勢――リミッターのかけ方とでもいえばよいのか――なのだということが、段々と見えてきた。

 なるほど。時として俺がアイドルの音楽全般に、一貫した美学のようなものを感じることのあるのは、ひょっとして、今述べた“リミッター”が効いているせいなのかもしれぬなと、今更ながらに考えさせられた格好であったが、この“リミッター”は要するに作り手の「冒険しようとする姿勢」に対して有効性を発揮するものといっていい。かつては手探りであった、そのパラメータ調整も、歳月とともに目的がより明確化され整理され、ついにはプリセットの時代に入っちゃったのかもしんねーなと(笑)。そんな感じを俺は覚えてしまったのだが、もはや「冒険は無意味どころかリスキー」だということである。ならば最初から“枠をはみ出さぬように”しておけばいい。結果アイドル用作詞作曲では、様式の固定化、表現の定番化に一層の拍車もかかろうというものだ。

 この界隈においては、作品の一人歩きなぞ、ますますありえぬ。あくまで演者あっての話だ。作家にはそれを肝に銘じることが、あらためて強く求められてきている……?

 例えば『アッパライナ』では、テンポ(速度)やリズムである。いわゆる“煽りやすい”せきたてられるようなビートは、ライブ会場を容易に熱く一体化させるための、昔からの何よりの武器であろう。凝った箇所のほとんどない、優しいコード進行は、ファン達が“何も考えずに身を委ねる”には持ってこいのものだ。

 そんな業界の昨今の非情な構造を、さりげなく示唆してくれたのが、天晴れ!原宿のプロデューサーの、プロフィール/キャリアにまつわる話だったかもしれぬ。

 当初、アイドルに興味はなく映画監督を志していたのが、スカウトのバイトを始めたところ、実際にインディーズのアイドルたちを見てすごいと思い、自分でも運営に手をそめてみたくなり、始めたとのこと。で、どうやら作詞作曲は――今回の仕事をみる限り――やらずのスタンスである。発注が“スタイル”のようだ。

 この25歳の若者カノウリョウのプロデュースした作品が、チャート誌で週間ランキング2位!につけてみせた。「現実」はこうなのである。

 令和の御世となり、何だか業界も動きをみせている? そんな気のしないでもない、今日この頃の私なのであった。

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

近田 春夫/週刊文春 2019年5月30日号

最終更新:6/3(月) 17:00
文春オンライン

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