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「反社会的勢力」に肩入れして墓穴を掘った西武信金

6/3(月) 6:00配信

JBpress

 「信金の雄」と呼ばれた西武信用金庫で、理事長の落合寛司氏が辞任に追い込まれた。5月24日、金融庁から業務改善命令処分を受けての引責辞任。当局が最も問題視したのは、落合氏以下複数の経営陣が開けてしまった「パンドラの箱」の存在だった。

■ 発覚したチャイニーズドラゴン“関係者”と取引

 西武信金は1969年に発足。昨年9月末時点の預金量2兆416億円は、全国261信金中14位の大手だ。2010年6月に落合氏が理事長に就任して以降、業容を拡大している。また、前金融庁長官の森信親氏も落合氏の手腕を高く評価していた。その結果、落合氏は金融庁金融審議会専門委員、経済財政諮問会議の政策コメンテーター委員会委員などの要職を務めるまでになった。

 順風満帆かと思えた西武信金の風向きが変わったのは昨年4月のこと。「かぼちゃの馬車」を運営する投資用不動産会社スマートデイズが破綻し、スルガ銀行の融資姿勢が問題視されると、同様に多額の不動産向け融資を実行する西武信金にも疑念が向けられ、ついには“第二のスルガ銀行”と呼ばれるようになっていった。

 金融庁が昨秋に実施した立ち入り検査では、スルガ銀行ほどの悪質な不動産融資は見つからなかったが、代わりに発覚したのが落合前理事長を始めとした幹部たちの「黒い交際」。それが「チャイニーズドラゴン」との関係だったのだ。

 チャイニーズドラゴンとは、中国残留孤児の2世や3世で構成され、警視庁からは関東連合とともに準暴力団と認定されている反社会的勢力だ。

 西武信金がチャイニーズドラゴンと関わりを持ったのは、東京郊外の立川市だった。立川市は西武信金とライバル関係にある多摩信金のお膝元で、西武信金は前線基地として立川南口支店を出店している。

 立川南口支店の支店長は、今回、落合前理事長とともに辞任した牛山淳一常勤理事だった。その牛山氏は「敵地」立川市で奮戦していたものの、マイナス金利政策の影響で業績は思うように伸びなかった。そんな時、知り合ったのが、預金をしてくれた上に金も借りてくれるスナックのママ。が、彼女こそチャイニーズドラゴン幹部の妻だったのだ。

■ 内部からの注意喚起もあったのだが・・・

 立川市など多摩地区は、チャイニーズドラゴンが跋扈していることで知られている。ママの夫もその一人で、傷害容疑で逮捕された前科がある。だがそんなこととはつゆ知らず、牛山氏は、スナックや居酒屋を手広く経営していたママから、客を紹介されて取引を拡げていった。

 ママが経営するスナックの1つは立川南口支店から徒歩数分の距離にある。店内の内装は小奇麗でテーブルが10ほど。料金は、1時間1万円にも満たず、都心のクラブやキャバクラに比べれば格安といえよう。

 この店に通っていたのは支店長の牛山氏だけではなかった。今回、ともに辞任した川島弘之専務理事、そして落合理事長まで足を運んでいたのだ。西武信金とこのママは、それくらい密接な関係を結んでいた。

 もちろん金融庁もその事実を把握している。立ち入り検査を行った際に提出させた、役員が使った交際費の領収書の中に、この店のものが含まれていたからだ。高給取りの信金幹部が、身銭を切らずに飲食代を信金の経費で落としていたというわけだ。金融庁がママの店で誰と会っていたのか追及すると、牛山、川島の両氏は「合併を模索していた金融機関が相手なので言えない」と答え、検査官から一笑に付されたという。

 一方、西武信金内部では、この関係に警鐘を鳴らす者もいた。上場企業の監査役に該当する監事が、ママの夫が逮捕歴のあるチャイニーズドラゴンの幹部との情報を聞きつけて、落合氏に取引停止を進言していたのだ。同じころ、西武信金は地元警察に身分照会をしたものの、対象者としていたのは、チャイニーズドラゴンの幹部である夫ではなく、ママの方。そのため、警察は「反社ではない」と打ち返したという。

 これで警察から「非・反社」のお墨付きを得たと勘違いした落合氏は、せっかく忠告した監事を怒鳴りつけ、取引を継続。その結果、ママ本人やその紹介者10人前後で融資総額は合計で40億円近くに膨れ上がったという。

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最終更新:6/3(月) 14:30
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