ここから本文です

「定価」が消える? リアル店舗もいよいよ価格が変動する時代へ...

6/4(火) 20:16配信

ニューズウィーク日本版

リアル店舗のネット化が進む

在庫が増えている商品については、状況によっては価格を下げてでも在庫を処分した方がよい。こうした判断はベテラン店員の経験と勘で行われてきたが、システムによる予測を組み合わせれば、常に在庫が最適水準になるよう、必要に応じて値下げを実施できる。

アマゾンをいつも利用している人なら実感として理解できると思うが、アマゾンは、かなりの頻度で商品価格を変動させている。商品を買った途端に、価格が安くなり、悔しい思いをしたという人もいるだろう。やり過ぎてしまうと、利用者の信頼低下につながるが、一連のシステムが、利益最大化と在庫適正化に大きく貢献しているのは事実である。

大手量販店が似たようなシステムの導入に踏み切ったことで、リアル店舗においても「定価」という概念が崩れる可能性が高まっている。利用者にとっては賛否両論があるだろうが、この流れは避けられないだろう。

こうした中、もっとも時代に追いついていないのが、日本の家電メーカーである。

これまで日本の家電メーカー各社は、従来の利益率を維持しようと、高価格の製品を無理に消費者に売りつけるという販売戦略を続けてきた。しかし、家電やAV機器は完全にコモディティ化しており、こうした昭和型のビジネスモデルはもはや通用しなくなっている。

家電量販店はこうした販売戦略の一翼を担っていたともいえるが、量販店がリアルタイム価格を模索している今、大手メーカーも従来型の製品戦略について抜本的に見直す時期に来ているといってよいだろう。

メーカーは製品戦略を根本的に見直すべき

大手電機メーカーの基本戦略はフルラインナップとなっており、価格が高くなるほど機能が豊富になる。こうした製品戦略を採用しているのは、高い価格帯の製品に必要な機能を集中させることで、販売単価を上げたいからである。高価格な製品には、消費者にとって不要な機能も含まれているが、安い製品ではニーズを満たせないので、消費者は渋々高い製品を購入する。

こうした価格戦略は、消費者の所得拡大が続く高度成長期にはうまく機能したが、成熟社会では通用しにくい。だが、日本の家電メーカーは製品戦略を変えず、製品サイクルを短くし、短期で売り切るという手法に終始している。

白物家電やAV機器はパソコンとは異なり、翌年になるとスペック的に使えなくなるということはなく、本来であれば、モデルチェンジは数年に一度でもよい。

ところがメーカー各社は、白物家電であっても毎年モデルチェンジを行い、新製品として販促キャンペーンを行っている。量販店には、多額の販売奨励金を支払うので、量販店は発売直後の高価格な製品ばかり売ろうとする。その結果、半年もすると各製品は激しい値崩れを起こすというのが現実だ。

各社は、スペック的には何も変わっていないにもかかわらず、型番だけを変えた新モデルを投入し、値崩れしないうちに販売するという悪循環が続いている。白物家電という製品の本質を考えると、これは一種の異常事態といってよい。

このような無理な販売を続けていると、高い価格で購入してしまった一部の消費者は必要以上の出費を強いられるので、その後の消費意欲が減衰する。つまり需要の先取りが発生してしまい、消費全体に対してよい影響を与えない。

メーカーは、利用者のニーズと製品のスペックに見合った適正な価格を設定し、細かい価格変動は、小売店に任せればよい。今回の量販店によるリアルタイム価格導入が、国内家電市場の価格適正化につながるのであれば、それは喜ばしいことである。

加谷珪一(経済評論家)

2/2ページ

最終更新:6/4(火) 20:17
ニューズウィーク日本版

記事提供社からのご案内(外部サイト)

ニューズウィーク日本版

CCCメディアハウス

2019-9・17号
9/10発売

460円(税込)

【特集】プーチン2020
領土問題で日本政府を手玉に取るプーチン── 米大統領選を標的にする強権大統領の世界戦略は

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事