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白血病の新治療薬キムリア、1回3300万円は「高すぎる」可能性

6/5(水) 7:01配信

現代ビジネス

「キムリア」はどんな薬なのか?

 5月22日からの保険適用が決まった白血病治療薬「キムリア」が話題を集めている。「1回の投与でほんとうに白血病が治るの?」、「どうしてこんなに高いのだろう?」と、疑問は尽きない。

 キムリアは、スイスに本社を置くノバルティス社が発売する、急性リンパ性白血病や悪性リンパ腫の治療薬である。「CAR-T細胞療法薬」とよばれる特殊な薬だ。

 患者の体内にあるTリンパ球は、白血病細胞を異物とみなして攻撃する能力があるが、がん細胞と戦うには十分な力がない。

 キメラ抗原受容体(CAR)は、白血病細胞の表面にある抗原を認識する抗体と、T細胞を活性化する受容体とを、遺伝子組み替え技術を用いて結合させたものである。このCAR遺伝子を遺伝子導入技術でT細胞に導入し、体外で培養した後に、再び体内に戻すのが「CAR-T細胞療法」だ。ただしキムリアは、Bリンパ球の表面にある「CD19抗原」という特定の抗原を標的としているので、これを発現している一部の血液がんにしか効かない。

 もともとはペンシルバニア大学が開発した技術をノバルティス社が特許料を支払って取得し製品化したもので、同社以外にも、いくつかの大手製薬会社が、大学や研究所の開発した技術を用いてCAR-T細胞の製品化を図っている。

 わが国でも、名古屋大学が信州大学と協力して、独自の遺伝子導入技術を用いたCD19-CAR-T製剤の開発に成功しており、その技術を使って、愛知県のベンチャー企業が製品化を計画している。

 筆者は過去40年間、小児科医として白血病患者の治療にあたってきたが、ここ数年はCAR-T細胞療法の開発に関与している。今回は「キムリア」にまつわる疑問にできるだけお答えしたい。

なぜ薬価は3300万円なのか?

 ところで、キムリアの薬価は「3349万円」と決まったが、これは1回分の値段であり、これに加えて入院費や、キムリアを投与する前に投与する抗がん剤や検査などの費用もかかる。さらに副作用が起きた時の薬剤も必要なので、治療費の総額は少なく見積もっても4000万円以上に達する。

 キムリアが高額になる理由として、「患者ひとりひとりにあわせてオーダーメードで製造するから」と説明されているが、実際に遺伝子導入や細胞培養、さらに製品検査などに必要な費用は、それほどかかるわけではない。すでに細胞分離や遺伝子導入、細胞培養を自動でおこなう器械も販売されている(写真1)。

 それでは、なぜキムリアはこんなに高額なのだろうか。

 開発にあたり、ノバルティス社がペンシルバニア大学に支払った特許料は1000億円と言われている。また、キムリアを製造する工場も必要である。製造原価はあまりかからなくても、特許料や工場の建設費用が上乗せされているのではないかと推測できる。

 しかし、キムリアの製造原価の内訳は、企業秘密のため明らかにされていない。

 ちなみに製造方法は異なるが、名古屋大学が1人分のCD19-CAR-T製剤を製造するためにかかる費用は、検査費用を含めて200万円ほどである。これには、特許料を必要としないことや、培養に必要な無菌室がすでにあるので、新たな設備投資が不要であることが大きい。

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最終更新:6/5(水) 7:01
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