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村田がソニーから買った電池事業 狙うはウエアラブル用全固体

6/5(水) 7:00配信

日経ビジネス

 連結の売上高営業利益率が16.9%(2019年3月期)と、電子部品大手の中で断トツの収益性を誇る村田製作所。同社の数少ないアキレスけんが、17年にソニーから買収した電池事業だ。

【写真】村田製作所が開発した全固体電池の試作品の一つ

 スマホ向けのリチウムイオン電池はコモディティー化が進んでおり、コスト競争が激しい。ソニー時代に設備投資が抑制されていたこともあり、ライバルに押されているのが現状だ。村田製作所では電池事業の黒字化が、22年3月期までかかるとみている。

 収益性改善へ、村田製作所が注力する一つが、次世代電池の本命と目される全固体電池だ。実はソニー、そして村田製作所ではそれぞれ10年以上の年月をかけて全固体電池の研究開発が進んでいた。現在は両社の知見を融合し、20年3月期の量産化へ向け急ピッチで開発が進む。

●車載向けじゃない

 全固体電池は、文字通り、現状のリチウムイオン電池では液体である電解質を固体にしたものだ。液体から固体になることで、耐熱性や液漏れがないなど安全性を高められるのが特徴だ。

 その特徴や、トヨタ自動車やパナソニックなどが開発を加速していることから、車載電池としての搭載が期待される全固体。だが、村田恒夫会長兼社長は、「車載向けと思われがちだが全然違う。エネルギー密度がまだリチウムイオン電池に比べると低いので、段階的に上げていくステップは必要だ」と話す。

 実際、TDKやFDKといった電子部品各社が開発を進める全固体電池は、容量やサイズは現行のリチウムイオン電池に比べて小型のものが多い。村田製作所でも「バルクチップ型」と呼んでおり、その電池容量は0.1~0.7mAh(ミリアンペア時)。各社が狙うのは、あらゆるモノがネットにつながるIoT機器に使われる1次電池の代替だ。

本命は大容量

 実は、村田製作所では「高容量型」と呼ぶ、容量が数十ミリアンペア時の全固体電池の開発も進んでいる。「1次電池の代替では意味がない。こちらが本命だ」と、中島規巨専務執行役員は語る。

 同社が高容量型の全固体電池で狙うのが、身に着けて使うウエアラブル機器だ。「(耳に装着する)ヒアラブルやリストバンド型端末などの分野で、商談が進んでいる」と同社技術・事業開発本部の堤正臣シニアマネージャーは語る。

 電池容量がまだ既存のリチウムイオン電池に劣る中、顧客が関心を示すのには理由がある。耐熱性や安全性が向上したことで、「半導体や積層セラミックコンデンサーと同じようにプリント基板上に直接実装できるようになる」(同社モジュール事業本部の西出充良プロジェクトマネージャー)ためだ。

 スマートフォンなどの電子機器にとって、電池は特殊な部品の一つ。これまでのリチウムイオン電池では、発熱などの危険性から、プリント基板への実装はおろか、CPU(中央演算処理装置)などほかの熱源からも隔離して配置する必要があった。

 これに対して全固体電池では、200℃を超えるような通常の実装ラインが使えるようになる。「顧客にとっては安全な電池を低コストで組み立てられるだけでなく、今まで隔離されていた電池が普通の部品になることで設計の自由度が高まるようになる」(西出氏)というわけだ。

 将来的に、村田製作所は全固体電池のスマートフォンなどへの搭載も視野に入れる。まずは第一歩としてウエアラブル機器に計画通り搭載できるかどうかが試金石となりそうだ。

佐伯 真也

最終更新:6/5(水) 7:00
日経ビジネス

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