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レンジャー部隊に女性が適任だった理由とは

6/6(木) 14:56配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

アフリカ、ジンバブエで密猟と闘う女性だけのチーム

 33歳の女性レンジャー、ビンバイ・クミールは現場に着くと、落ち着いた様子で人だかりの中に入っていった。ここはアフリカのジンバブエ。ヒョウに襲われてけがをしたという男性が10人、のろのろと歩み出てくる。1人はほおにガーゼを貼り、1人は腕に巻いた包帯から血がにじんでいた。

ギャラリー:密猟と闘う女性レンジャー

 男たちは怒っていた。ヒョウの死骸を引き取りに来た保護管理官たちに、ヒョウを殺すのは違法行為だと非難されたからだ。男たちはヒョウが襲ってきたのだと主張したが、傷の程度から見て正当防衛ではなさそうだと、レンジャーたちは判断した。ジンバブエでは、許可なく野生動物を殺せば犯罪となる。だがヒョウの毛皮や歯、爪や骨を闇市場で売れば、1カ月分の給料に相当する大金が手に入る。

 事件状況の記録を終えたレンジャーたちには、まだ仕事が残っていた。自分たちは人間と野生動物の関係を良くするために来たのだと、村人に再認識してもらわなければならない。クミールたちは負傷者をトラックに乗せ、地元の診療所へ連れていった。

女性だけの部隊ができた理由

クミールが所属するのは、女性だけで編成されたレンジャー部隊「アカシンガ」。現地のショナ語で「勇気ある者たち」を意味する。

 アカシンガは、密猟の防止を目的にザンベジ川下流のプンドゥンドゥ野生動物公園を管理している非営利団体「国際密猟撲滅基金(IAPF)」の一部門で、29の村と境界を接する公園内をパトロールしている。

 アカシンガを設立したのは、オーストラリア人のダミアン・マンダーだ。特殊部隊の元兵士で、10年以上にわたってジンバブエでレンジャーの育成に携わってきた。イラクで従軍し、アフリカで密猟者との闘いを経験した彼は、変化を起こすには地元住民の理解と協力が不可欠だと考えるようになった。

 そこでマンダーは、アカシンガのメンバーを募集する際、プンドゥンドゥ周辺の村人、特に女性たちに呼びかけた。長年、男性レンジャーの訓練をしてきた経験から、この仕事には男性よりも女性の方が向いている面があると考えたのだ。たとえば、女性は男性よりも密猟者からの賄賂になびきにくく、暴力沙汰に発展しそうな事態を収拾するのも上手だ。

 アカシンガの選抜テストは、特殊部隊での訓練を手本にしてつくられた。参加者37人は3日間、休みなく訓練を受けたが、途中で脱落したのはわずか3人だった。マンダーは数年前に、同様の訓練を189人の男性に実施したことがあったが、訓練2日目には3人しか残っていなかった。

 その働きぶりを見ていると、「こういう女性たちが状況を変えるのだ」というマンダーの直感が正しかったことがわかる。

※ナショナル ジオグラフィック6月号「密猟と闘う女性レンジャー」は、野生動物の密猟を防ぐため、女性だけのレンジャー部隊が活躍しているジンバブエの取り組みを紹介します。

文=リンジー・N・スミス/英語版編集部

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