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「マンモス展、ここが面白い」監修者が解説、お台場で開催

6/6(木) 16:01配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

東京・お台場の日本科学未来館で企画展「マンモス展」-その『生命』は蘇るのか- が開催されています(2019年6月7日~11月4日)。冷凍マンモスほか展示の見どころについて、今回の展示を監修した野尻湖ナウマンゾウ博物館館長、近藤 洋一氏に語っていただきます。

ギャラリー:毛深いマンモスの鼻ほか「マンモス展」のみどころ 写真11点

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 マンモスといえば、2005年の愛知県の「愛・地球博」でも展示された冷凍マンモス「ユカギルマンモス」や2013年横浜で展示された少女マンモス「YUKA」などが有名で、こうした冷凍マンモスは幾度か日本にきており、日本では最も人気のある古生物の一つだといってもいいだろう。

 マンモスと聞いて想像する姿は、大きな曲がった牙(切歯)と尖がった頭、そして全身を覆う長い毛だが、これはケナガマンモスのことである。こうしたリアルな復元ができるのも、冷凍でケナガマンモスの軟体部がそのまま残存していることで、生きた時の姿を知ることができるからだ。

 冷凍マンモスは、古生物としてはたいへんめずらしい貴重な標本である。筆者は今回の展示に先立って、ロシア、サハ共和国のロシア北東連邦大学等でこれらの冷凍標本を調査する機会を得たので、主だった古生物の標本について概要を紹介したい。

冷凍マンモスの魅力

 今回の「マンモス展」では、「ユカギルマンモス」が再度来日する。マンモスの頭部としては最も保存状態が良い完全な標本で、大きくねじれた牙と小さな耳、側頭腺など、冷凍標本ならではの迫力がある。

 側頭腺とは現生ゾウにもみられる、耳と目の間にある小さな穴で、強い刺激臭のある液体を分泌する。この分泌物は周期的に排出され、その時期(マトス期とよばれる)は攻撃的になり頻尿や食欲不振になるといわれている。おもにオスに現れる現象であることから性行動に関連しているという見解もあるが詳しいことはわかっていない。

 この側頭腺が「ユカギルマンモス」で確認されたことで、ケナガマンモスにもマトス期があることがわかった。ユカギルマンモスはほかにも多くの研究がなされ、ケナガマンモスの古生物学的研究が大きく進展した標本である。

 サハ共和国ノボシビルスク諸島マールイ・リャホフスキー島で2013年に発見された、ケナガマンモスの鼻も今回の見どころのひとつだ。3万2700年前という放射性炭素年代(較正年代値)が得られている。マンモスの冷凍標本では、これまで子どもマンモスの鼻は数点みつかっているものの、おとなの鼻はなぜかほとんど発見されておらず、過去に1例があるだけである。

 今回展示されるのは、見つかった鼻の先端部だ。表面(垂れ下がった鼻の体から遠い面)には毛がびっしりと生えていて裏面(体に近い面)には毛がない。鼻の先端の形態はゾウの種類によって異なっていることが報告されていて、ケナガマンモスの鼻は上の突起が細長く、下の突起は幅広いと考えられていた。

 しかし今回見つかった標本には、上に1つの突起と下には2つの突起が認められる。これは埋没後に変形したものなのか、種としての特徴なのか今後詳しく検討する必要があるが、もし変形でないとすると興味深い。これまでは上にある1つの突起だけで草をちぎって食べていたと考えられていたが、実は3つの突起で器用に草をむしることができたかもしれない。また、裏面には鼻先から上方にやや幅広い部分があり、ここに鼻先をまるめて外気の寒さから鼻の先端を守っていたのではないかと考えられている。

 今回展示されるのは鼻の先端だけだが、発掘されたのは全長210cmの鼻の全体だった。今後この標本を研究することで、ケナガマンモスの鼻の全貌が明らかになるのではないかと期待される。

 較正年代3万1150年前のマンモスの皮膚と毛も展示される。これは2018年8月、「マンモス展」にあわせて、ロシア北東連邦大学と日本との合同調査が行われた際に、サハ共和国ベルホヤンスク地区ユニュゲンで発見採集されたものだ。マンモスの皮膚の色が生々しく残っている。後肢から腹部にかけての広い範囲の皮膚で、場所によって皮膚の色が違っており、生きていたときの姿を彷彿させる。この近くには下顎骨や椎骨、四肢骨などが散乱していたという。マンモス展ではそのときの様子をビデオで見ることができるが、永久凍土の発掘がいかに困難な発掘であるかを認識させてくれる。

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