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「超高額薬」登場の一方で医療費には削減圧力、製薬業界の恨み節

6/6(木) 6:00配信

ダイヤモンド・オンライン

 短期間の治療で驚くほど病状が改善することもあるが、驚くほど高額――。

 スイス製薬大手ノバルティスのがん治療薬「キムリア」(写真)など革新的だが高額な治療薬が相次いで登場し、製薬業界は異次元のフェーズを迎えている(表参照)。

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 「新しい治療の時代に入った」とノバルティスのオンコロジー(がん)ジャパンのプレジデント、ブライアン・グラッツデン氏(『1回の治療で3349万円、「超高額薬」のノバ社幹部に聞く薬価問題』)」の鼻息は荒い。イノベーションによって製薬業界が活気付いている。ただ、同時に外部から薬価高騰へ批判が巻き起こり、関係者の表情はさまざまだ。

 キムリアによる治療方法の概要はイラストの通り。まず患者から採血し、米国の製造施設に輸送する。血液中の免疫細胞(T細胞)を遺伝子操作し、攻撃力を高めた免疫細胞(CAR-T細胞)に改良して培養。再び日本へ輸送し、患者の体内に戻してがん細胞を攻撃させる(体内に戻す際に製品化したものがキムリア)。

 従来の「薬」の概念を超越した存在である。総称としてCAR-T細胞療法と呼ばれ、キムリアが日本市場で第1号。日本勢ではタカラバイオ、武田薬品工業、第一三共なども開発を進めている。

 キムリアの驚きは、治療方法だけではない。その価格にある。

 米国では5000万円超の値が付き、効果があった場合のみ支払いを求める「成功報酬型」が採用された。日本での薬価(医療用医薬品の公的価格)は5月15日、3349万円に決まった。米国と比較すれば値は下がったが、1回投与の薬価としては過去最高額となった。

 共に血液がんの一種である「B細胞性急性リンパ芽球性白血病(25歳以下)」、「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」患者のうち既存の治療薬が効かない一部患者が対象で、厚生労働省は販売額をピーク時で年72億円と予測する。

 この1件だけで公的医療保険制度が揺らぐことはない。だが、小野薬品工業のがん治療薬「オプジーボ」のように投与できる病症(適応症)が拡大したり、今後も同種の高額薬剤が続いたりすれば、公的保険が土台から揺るぎかねない。

 キムリアの薬価について審議する厚生労働相の諮問機関「中医協」では、一部委員から「薬価を決める根拠となる総原価の情報開示度が低い」などと、ノバルティスに対して批判の声が上がった。

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最終更新:6/6(木) 6:00
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