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村田製作所がムラタセイサク君に託したある役割

6/6(木) 11:00配信

日経ビジネス

 電子部品大手、村田製作所が本社を置く京都府長岡京市。5月16日、同市にある長法寺小学校では、あるダンスパフォーマンスに小学生たちが歓声を上げていた。「村田製作所チアリーディング部」。村田製作所が開発した女の子型ロボットだ。

【関連画像】最大で10台が連携する村田製作所チアリーディング部の写真

 このイベントは村田製作所が開催した「出前授業」でのひとコマ。音楽に合わせて、4台の小型ロボットがダンスを踊り始める。ロボット同士が互いに距離を取りながら、列を組んだり、円形になって回ったりできるのが特徴だ。

●ロボット開発の狙いは2つ

 チアリーディング部は、2014年に開発を発表。1991年と2005年に発表された自転車運転型ロボット「ムラタセイサク君」、08年発表の一輪車運転型ロボット「ムラタセイコちゃん」に続く、4代目のロボットにあたる。エンジニアの読者であれば、「シーテック・ジャパン」など国内外の見本市で1度は見たことがあるのではないだろうか。

 いずれのロボットにも、センサーや無線通信モジュールなどの自社製の電子部品を数多く搭載。電子部品メーカーである村田製作所がわざわざロボットを作るのは、大きく2つの狙いがある。1つはロボットという精密機器の要素技術を支える技術のアピール。もう1つは、科学の楽しさを小学生に伝えて、将来的な「理系離れ」を防ぐためだ。

 村田製作所が出前授業を実施するのは、まさに2番目の目的のためだ。チアリーディング部のみならず、発表から10年近くたったセイサク君やセイコちゃんも国内の小学校などを日々訪問。現在でも年間100日程度、出前授業を開催している。京都のみならず日本全国を飛び回る、多忙な日々を送っている。

 単純にチアリーディング部などのロボットによるデモを見せるだけではない。冒頭の長法寺小の出前授業では、体験型のプログラミング授業を開催。小学校では2020年度からプログラミング教育が必修化される流れを受けて、新たに出前授業の内容に盛り込んだ。今後、こうした新たなカリキュラムも追加していく考えだ。

 一方で、もう1つの狙いである技術アピールも実を結びつつあるようだ。

 セイサク君(初代、2代目)、セイコちゃんと、チアリーディング部の大きな違いは、前者3機種は単独のロボットとして機能していたのに対して、後者のチアリーディング部は最大で10台の小型ロボットがセンサーや無線通信を駆使して連携することだ。

●クルマの未来を先取り

 こうした複数のロボットが連携する技術を今、最も求めているのは「CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)」と呼ばれる大変革期を迎えている自動車業界だろう。コネクテッドや自動運転など、自動車があらゆるモノと通信する「V2X」の世界は、まさにチアリーディング部で導入されている技術が求められる。 

 村田製作所が現在、注力するのが車載分野。昨年11月に発表した中期構想では、「車載向けを(スマートフォンなど)通信向けと並ぶ2本柱にしていく」(村田恒夫会長兼社長)考えを示している。

 「技術のロードマップを5年から10年のスパンで引いている」。村田製作所の経営陣の1人は長期戦略の重要性を説く。チアリーディング部は誕生から5年弱。まさに長期的な視点で見た世界が訪れようとしていると言えそうだ。

 理系離れを防ぐだけでなく、事業戦略の一端を担う村田製作所のロボット。やはり気になるのは次世代機だろう。05年からの10年間に、3機種のロボットを世に送り出してきただけに期待したいところだ。もっとも、次世代機の誕生は車載の「次」を見据えたタイミングになるのかもしれない。

佐伯 真也

最終更新:6/6(木) 11:00
日経ビジネス

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