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過去作品のリメイク版ではディズニーは進化していかない

6/7(金) 18:00配信

クーリエ・ジャポン

いよいよ公開となった実写版『アラジン』。大ヒットが予想されるこの作品だが、米紙「ニューヨーク・タイムズ」のミレニアル世代の記者は「ディズニーは時代遅れだった過去の作品の汚名を返上しようとした。しかしその努力は、オリジナルな脚本制作に向けられるべき」だという。その理由は──。

新作に登場したのは「ジャスミン2.0」

2019年の今、ジャスミンはもうプリンセスの身分を捨てたいと願っている──。

ディズニーの数あるアニメーション映画のヒット作品の最新実写版リメイクである、ガイ・リッチー監督作品『アラジン』では、ジャスミン(ナオミ・スコット)は、アグラバー王国の王サルタンとして父親を継ぐ野望を抱いている。

しかし父親は女性であるジャスミンを国王にする気はない。なぜならば女性国王は伝統に反するからだ。

まずは劇中のブロードウェイ風な新曲で、ジャスミンがソロで歌う(女性にとって)パワフルなバラード曲の歌詞に注目しよう。曲中でプリンセスは「私は黙っていられない」というフレーズを複数回ドラマチックに繰り返し、サビで「これだけは真実、私は黙ったままではいないわ」と念を押す。

これは筆者が子供時代から記憶している、自分で選んだ王子と結婚することが最大の関心事だったあの頃のジャスミンではない。新しいジャスミンはいわば大型アップデートされた「ジャスミン2.0」で、野心的でキャリアに邁進する、おへそを絶対露出しないヒロインなのだ。

この変化は喜ばしいはずだ。ジャスミンはより進化し、よりインクルーシブな姿に!

……たぶんディズニーはこう願ったのだ。ディズニーのプリンセスたちとディズニー音楽教育ビデオ「シング・アロング・ソング」が子供の頃の定番だったミレニアル世代が「ジャスミン2.0」の新しい冒険に夢中になり、1992年の大ヒットアニメーション版の彼女を超えて表向きは進化したことを喜ぶと。

確かに、制作スタジオの重役たちが繰り返し約束してきたように、ディズニーは映画業界のトレンドを受け入れ、よりインクルーシブであることを実践している。

そうわかりつつも、過去の罪を償うという口実で、子供の頃に観た映画を次々と温め直す方法には違和感を覚える。無理矢理押し込まれた進歩的メッセージは、むしろ、ディズニーが無粋な形で金儲けしていることを目立たせている。

ジャスミンだけではなく、人の歓心を買うことを目的にしたディズニーの他のリメイクも、同様に的外れだ。2017年の『美女と野獣』の公開前、ビル・コンドン監督がインタビューで、ディズニー映画「唯一のゲイな瞬間」を取り入れたとほのめかし、映画の広報チームは言う必要のなかった監督のこの発言につまずく結果となった。

その瞬間というのは、映画のラストにル・フウともう一人の男性が一緒に躍るシーンで、瞬きすると見逃してしまうような一瞬のカットに過ぎなかった。しかもそれは唯一のシーンなどではなく、ル・フウは劇中の大部分でガストンに惹かれていることをおおっぴらに宣伝している。

3月に公開されたティム・バートン監督によるリアルなファンタジー作品『ダンボ』には、1941年版にはなかったいくつかのキャラクターが登場する。

そのうちのひとりの女性、ミリー(ニコ・パーカー)の役割はたったふたつ──ダンボの通訳(推測するには、ミリーの会話の少なくとも75%はかわいそうな赤ちゃんゾウがその時々に何をやっているか、または感じているかの説明)と、「違う時代に生まれていたら、男性優位のSTEM(科学・技術・工学・数学)の世界を揺るがす女の子になっていた」というものだ。

ミリーは人というよりも、薄っぺらなガール・パワーを象徴するアバターなのだ。

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最終更新:6/7(金) 21:54
クーリエ・ジャポン

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