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古代の土器作りは「女性の仕事」? 指紋から意外な事実

6/7(金) 7:12配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

1000年前の土器985片に残る指紋を調査、北米の古代プエブロ文化

 アメリカ古代文化の中心地で発掘された土器を改めて分析したところ、「土器製作は女性の仕事」とされてきたこれまでの常識を覆す結果が得られた。6月3日付けで学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された。

ギャラリー:100年前のナショジオ「チャコ・キャニオン遠征」 写真7点

 米ニューメキシコ州北西部に位置するチャコ・キャニオンは、西暦800~1200年頃、重要な文化と宗教の中心地だった。ここに住んでいた古代プエブロ人は、粘土を太い縄のようにして、らせん状にぐるぐると巻いて器の形にする「波状文様土器」を作っていた。

 1000年前、こうした土器は女性が作っていたと一般的に考えられていた。というのも、もっと現代に近いチャコ・キャニオンでも、土器製作は主に女性の役割だったためだ。

「現代のプエブロ女性たちは土器を作り、その作り方を娘たちに伝えてきました。ですから、はるか昔の祖先もそうだったのだろうと思い込んでいました」。論文を執筆した米ノースフロリダ大学のジョン・カントナー氏は、そう語る。「けれど、実際には誰が作っていたかを直接見ることはできませんから、考古学者たちも腑に落ちずにいたのです」

 波状文様の土器は、親指と人差し指で粘土と粘土を挟んで貼り合わせていたので、粘土には製作者の指紋が残されている。これらの指紋を分析すれば、製作者の性別がわからないだろうか。

 論文共著者で、カントナー氏の教え子だったデビッド・マッキニー氏は、そう質問した。マッキニー氏は当時、警察署で働いていた。そこでカントナー氏は、男女の指紋の違いを調べるため、法科学捜査に乗り出した。指紋の隆線が男性の場合は女性よりも9%太いという過去の研究結果を用いて、チャコ・キャニオンのブルーJという発掘現場で出土した985個の土器の欠片を分析した。

 その結果、47%の欠片に残されていた指紋の隆線の幅が、平均して0.53ミリで男性のものと分類され、40%が平均して0.41ミリで女性または子どものものと分類された。残りの12%はその中間で、「性別不明」とされた。

 土器の欠片をさらに年代別に分けてみると、古い時代の土器に残されていた指紋は66%が男性のものだったが、新しい土器には男性と女性の指紋がほぼ半分ずつ残されていた。以上のことから、かつて男性も土器作りに関わっていただけでなく、男性と女性の割合は時代とともに変化したことがわかる。

 この研究は、チャコ・キャニオンでの土器製作者を男女別に示した初の直接的な証拠となった。

「男性または女性だけの仕事だったというわけではないでしょう。土器製作に限らず、当時のプエブロ社会におけるほかの活動にも同様の見方ができるかもしれません。そして、ひとつの社会が労働をどのように分担していたかを考えるとき、まず最初に頭に浮かぶのが、男女別の役割分担という思い込みを見直させてくれる研究です」と、カントナー氏は述べている。

 なぜ男性が土器製作に関わるようになったのか、その理由はこの研究だけではわからないが、カントナー氏は、チャコ・キャニオンが文化の中心地として急速に発展し、周辺地域への需要が高まったためではないかと考えている。

「考古学的記録をみると、非常に多くのものがチャコに流入していたことがわかります。周囲の村々や巡礼者からの贈り物だったのかはわかりませんが、チャコへ運ばれる土器の製作に多くの人が関わりたくなる状況があったのかもしれません」

 ネブラスカ・リンカーン大学の人類学者でチャコ・キャニオンを専門とするキャリー・ハイトマン氏も、興味深い研究結果だとしたうえで、これを裏付けるにはチャコ・キャニオンの別の場所で出土した土器との比較研究も必要だと話す。

「チャコ・キャニオンで見つかったほかの土器との比較分析があれば、もっと正確なことがわかるでしょう。当時起こっていた変化の一部を切り取っただけかもしれませんが、性別に注目した今回のような分析は、当時の男女の役割を理解する助けになります。そして、過去の歴史を知るうえでより豊かで性のバランスがとれた視点を与えてくれるでしょう」

文=Michelle Z. Donahue/訳=ルーバー荒井ハンナ

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