ここから本文です

ECBのドラギ総裁の記者会見-Readiness to act

6/7(金) 8:33配信

NRI研究員の時事解説

はじめに

今回(6月)の政策理事会は、宿題となっていたTLTRO IIIの金利条件を決定したほか、政策金利に関するforward guidanceも強化した。しかし、ユーロ相場はドラギ総裁の会見中に強含む動きを見せた。その理由も考えつつ、記者会見の内容を検討したい。

新たな経済見通し

政策判断について検討する前に、その前提となる経済情勢の評価をみておきたい。

ドラギ総裁は、冒頭説明の中で、足許の経済指標やsoft dataを見る限り、ユーロ圏の経済成長率が第2四半期以降に減速する可能性が高いことを認めた。もっとも、雇用の拡大や賃金の上昇、域内国の財政政策などによって、ユーロ圏経済のresiliencyは維持されるとの見方も確認した。

今回改訂された執行部見通しでも、2019~21年の実質GDP成長率を1.2%→1.4%→1.4%とみており、前回(3月)に比べて、2019年は0.1ppの小幅な上方修正(第1四半期の伸びを考慮)、2020年と2021年は各々0.2ppと0.1ppの小幅な下方修正に止まった。また、2020年以降は潜在成長率近辺で推移すると予想していることも意味する。

物価に関しても、ドラギ総裁は、5月のHICPインフレ率の顕著な減速がエネルギーやサービス関連の価格動向による面が大きいとし、当面は下押し圧力が強いとしつつも、年末にかけては賃金上昇などを背景にモメンタムを回復するとの期待を維持した。

これまで下方修正が目立った執行部見通しも、2019~21年のHICPインフレ率を1.3%→1.4%→1.6%とみており、前回(3月)に比べて、2019年は0.1ppの小幅な上方修正、2020年は0.1ppの小幅な下方修正に止まった。

これに対し記者からは反論が示され、特に景気に関して悲観的な見方を示す向きが目立った。これに対しドラギ総裁は、政策理事会ではメインシナリオに関する信認が維持されている点を強調する一方、以前に比べると通商摩擦やBrexitに関する不確実性が上昇し、問題が長期化するリスクが高まったことも認め、これが今回の政策決定の背景であると説明した。

物価に関しても、複数の記者が市場ベースのインフレ期待の低下を取り上げ、アンカーが崩れる事態への懸念を示した。しかしドラギ総裁は、サーベイベースの長期インフレ期待は安定を維持していると反論したほか、市場でもデフレや景気後退の蓋然性を意識する向きは少ないと指摘した。

その上で、景気と物価の双方に関わる問題として、一部の記者が通商摩擦が冷戦のように定着するリスクを挙げたのに対し、ドラギ総裁も、金融市場が経済指標が示唆する以上に不安定化している背景として、単なる通商摩擦を超える事態を意識している可能性を認めつつも、個人的にはそうした見方に同意しないとの立場を示した。

1/3ページ

最終更新:6/7(金) 8:36
NRI研究員の時事解説

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事