ここから本文です

エアコンがCO2を燃料に変える“工場”になる?

6/8(土) 14:12配信

WIRED.jp

スケールアップは難題だらけ

この技術を多くの建物や都市に広めるには、まだ数多くの難題がある。

例えば、生成した燃料を保存回収する方法だ。トラックで燃料を回収して施設に運ぶ、あるいは生産量が多い場合にパイプラインを建設する方法などが考えられるだろう。

この難問はふたつの問題をはらんでいる。第1の問題は、多数のエアコン装置を改良しなければならない点である。なお、その改良にかかる費用は明らかではない。というのも、技術自体がまだ仕上がっていないからだ。第2の問題は、クラウドオイルを使用する現場まで運ぶインフラをつくらなければならない点である。

クラウドオイル以外にも、CO2を大気中から吸収する方法はある。カナダのカーボン・エンジニアリング(Carbon Engineering)では、空気からCO2を取り込んで保存する、いわゆるCO2回収・貯留(CCS)用のかなり大きな独立型装置を開発中だ。同社の主任研究員代理デヴィッド・キースは、次のように語る。

「電力を用いてつくるカーボンニュートラルな炭化水素燃料は、わたしたちが抱えるふたつの大きなエネルギー問題の解決に役立つ可能性があります。間欠的な再生可能エネルギーを管理すること、そして交通機関や産業界で電動化が困難な部分を脱炭素処理することです」

キースは続ける。「わたしはカーボン・エンジニアリングと協働しているので意見が偏っているかもしれないのですが、エアコンを利用するような分散型対応にはかなり懸念を抱いています。CO2という大きなゴミを、エアコンのような小さな処理場で処理するわけにはいきません。大型の風力タービンがあるのには理由があるのです」

新技術で真の目標を霞ませてはならない

また、大気中にすでに存在するCO2を捕捉する技術は、いずれもモラルハザードという厄介な問題に直面する。

カーボン・エンジニアリングが取り組んでいるようなネガティヴエミッション技術も、エアコンでCO2を除去するニュートラルエミッション技術も、大気中のCO2を取り込む技術だ。前者はすでに大気中に排出されているCO2を回収・除去する方法であり、後者は大気からつくった燃料を燃焼してCO2を排出することによって、CO2の排出量を相殺する方法である。

問題は、こうした技術の開発によって、気候変動に取り組む際に最も重大な目標、つまりCO2のそもそもの排出量を早急に減らすという目標がかえっておろそかになってしまう点だ。なかには、資金と時間はすべて、クルマや産業がカーボンニュートラルやカーボンネガティヴ(排出量が吸収量より少ない状態)に向かうような技術に使われるべきだという人もいるだろう。

大気中のCO2の回収にエアコンを使うというアイデアは、気候変動の問題への万能薬にはなりえない。この方法を使って本当のカーボンニュートラルにするためには、あらゆる動力源を再生可能エネルギーにしなければならないからだ。しかし、ディットマイヤーが提案する建物全体を覆う太陽光パネルは、まだ商業化が始まったばかりである。

CCSに対する一般の人々の認識を調査した経験のあるスイス連邦工科大学チューリッヒ校の環境社会学者セルマ・ロランジュ・セイゴ博士は、今回の論文で紹介された技術についてこう考えている。「新技術を追求することが倫理に反するとは思いません。それだけを追求することが倫理に反するのです」。なお、セイゴは今回の論文の研究には参加していない。

3/4ページ

最終更新:6/8(土) 14:12
WIRED.jp

記事提供社からのご案内(外部サイト)

『WIRED Vol.33』

コンデナスト・ジャパン

2019年6月13日発売

1,200円(税込み)

『WIRED』日本版VOL.33「MIRROR WORLD - #デジタルツインへようこそ」来るべき第三のグローバルプラットフォームを総力特集

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事