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『ラ・ヨローナ~泣く女~』が浮き彫りにした、“ジャンル映画”という概念の弊害:映画レヴュー

6/8(土) 15:12配信

WIRED.jp

映画『死霊館』シリーズの関連作品である『ラ・ヨローナ~泣く女~』はサスペンスに満ち、雰囲気ある巧みな構成で見ごたえのある作品となっている。だが一方で、ホラー映画として認識・マーケティングされ、ホラー映画に仕立て上げられたことに問題が潜んでいるのではないか──。映画批評家のリチャード・ブロディによるレヴュー。

恐怖を生み出す常套手段と独創的なシーン

映画『死霊館』シリーズの関連作品である『ラ・ヨローナ~泣く女~』は、スリルあふれる作品ではない。代わりにサスペンスに満ち、雰囲気ある巧みな構成で、文字通り見ごたえのある作品となっている。

リアルな生活の場で物語が展開されているような印象を与え、現実を詳細に描くことで緊張感を引き出している。生々しい空気感のおかげで、シンプルなストーリーに厚みをもたせることに成功している。しかし、それだけに、見どころのシーンでの感情の描き方がいっそうもったいないと言わざるを得ないのだ。

メキシコの伝説がベースの物語

表題にもなっている「泣く女」は、メキシコの伝説の中心的存在として知られ、本作では冒頭のシーンから登場する。舞台は1673年のメキシコ。最初のシーンで描かれるのは、ある家庭の明るい情景だ。若い母親とふたりの息子、そしてひとりの男が登場する。

ところが次のシーンでは、ある湿地で母親が息子のひとりを溺死させている。隠れてその現場を見ていたもうひとりの息子も、母親に見つかってしまう。

ここで舞台は1973年のロサンジェルスへと移る。質素ながら明るい雰囲気の家。リンダ・カーデリーニ演じる女性アンナが、ふたりの子どもをスクールバスに間に合うように慌てて送り出す。騒がしい朝の情景だ。

マイケル・チャヴェス監督は、ステディカムを利用して長回しのシングルショットで撮影し、使い古されたありきたりなシーンに活気と華やかさを与えている。アンナは夫を亡くしていて、児童施設でソーシャルワーカーをしている。夫は警察官で、職務中に殉死したのだった。

脚本はミッキ・ドートリーとトビアス・イアコニスが手がけ、さりげなく、しかし明確に仕事中のアンナの心情を描いている。彼女はシングルマザーであることの重圧や仕事に対する責任感から、気を張り詰めて仕事に臨んでいる。

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最終更新:6/8(土) 15:12
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