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権田修一、ポルトガルで掴んだ新たな感覚。GKの高みを追求する日々、挑戦心と自信は失わず

6/9(日) 12:29配信

フットボールチャンネル

 日本代表は9日、キリンチャレンジカップ2019でエルサルバドル代表と対戦する。この試合で先発起用が濃厚なGK権田修一は、アジアカップを終えてからの半年間をポルトガルで過ごした。出番がなく腐ってもおかしくない中で、高いモチベーションを保ちながら挑戦できた理由とは。そして、2度目の欧州移籍でどんなものを掴んだのか。GKとして己を磨き続ける30歳の今に迫る。(取材・文:舩木渉)

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●ポルトガルで直面した現実

 常に挑戦者であり続ける。これほど難しいことはない。人間、どこかで甘えや満足感が生じてしまうものだ。

「現時点で代表に自分がどれだけ貢献できるかという立ち位置は、割と今大会で明確になって、やっぱり貢献はなかなかできていないなというのが個人的な大会を通しての総括です」

 権田修一は、今年の初めにUAEで開催されたUAEでのAFCアジアカップでの自らのパフォーマンスに全く満足していなかった。日本代表は準優勝。サムライブルーの正守護神を任されたが、チームを頂点に導くことはできなかった。ピンチを救う数々の好セーブがあった一方で、準々決勝のベトナム戦では自陣内での判断ミスにより、危険なパスからゴール前で相手にボールを奪われてあわや失点という場面もあった。

「これから先は僕がここで結果を残せるGKになるために挑戦をする。僕自身が別に代表で活躍しなくていいんだったら国内でやっていればいいんですけど、そこはしっかり自分がどこのステージでサッカーをしたいかを考えなければいけない」

 アジアカップ終盤にサガン鳥栖からポルトガル1部のポルティモネンセへの移籍が決まっていた。J1で残留争いに巻き込まれた鳥栖において、失点をリーグで2番目に少ない「34」に抑える大活躍を披露し3年ぶりの日本代表入り。だが、それで満足しない。彼が追い求めたのはヨーロッパのトップリーグで感覚を研ぎ澄まし、GKとしてより高いレベルに到達することだった。そのためにリスクを冒して家族を連れて海を渡った。

 だが、ポルトガルで直面した現実は厳しかった。ポルティモネンセが残留を争っていたこともあって正GKをいきなり入れ替えるのは難しく、ベンチ入りもままならない状況。結局、トップチームでの公式戦出場は残留が決まった後の最終節のみだった。

「シーズンの途中で移籍するのは簡単じゃないとわかっていたし、その中でとにかく自分でどうしたら出られるだろうというのを考えて、ひたすら足掻いていた感じですね。だからどういうプレーをしたらいいのか、自分の中でいろいろなチャレンジもしました。残留争いをしていてチーム状況的になかなかGKを替えられなかったので、それが(出場機会に)直結するとは限らない中でも、プレーのところもそうだし、練習以外のところでも、逆に時間があったので、そういう意味では自分でいろいろなチャレンジができた半年だったかなと思います」

●ようやく訪れた出番は「再確認できた試合」

 権田にとって2度目の海外移籍。2016年にオーストリア2部のSVホルンへ渡って以来の、選手人生をかけた挑戦。まっすぐにGKとしての高みを追求する姿勢は、30歳になった今も変わらない。かつてその愚直さが自らの心と体を蝕み、オーバートレーニング症候群によって歩みを止めなければならない時期もあった。

 突如として止まってしまった時計の針を再び動かし、新天地の鳥栖でシュートを止めまくった。そうして見えてきた光の先で掴んだヨーロッパ移籍。自分と向き合い、己の心技体を磨くポルトガルでの日々は充実していた。

 2019年5月17日。ポルトガル1部の最終節で、背番号16をまとった権田は移籍後初となる先発メンバーに名を連ねた。相手はリーグ4強の一角、ブラガ。結果的には0-2で敗れてしまったが、半年間懸命に取り組んできたことの成果を、ようやく実戦で確認できた90分間だったという。

「どういう形であれ試合に出るのは僕とってすごく大事なことでした。ただ負けましたし、結果を出すために自分はプレーするので、そこは良かったとは言えないですけど、半年間自分がやってきたことだったりとか、その方向性は間違っていなかったというのを再確認できた1試合でした」

 それまでもU-23チームの試合に出場する機会が何度かあった。レベルは多少落ちるものの、そういった限られたチャンスの中で、日々チャレンジしてきたことを少しずつ発揮しながらトップチームでの出番を待っていた。「半年の準備期間」を経てブラガ戦に出場したことで、ようやく来季、シーズンスタートから競争に加わるためのスタートラインに立つことができた。

●「どんな強みを出せますか? と言われても…」

 今度は日本代表で、アジアカップ後の半年間のチャレンジの成果を見せる時だ。環境が変わればGKに要求されるプレーの質や選択肢が変わり、コーチによる指導からサッカーのスタイルなど、あらゆるものに適応していかなければならない。日本で通用したことが、ポルトガルでは通用しないこともあり、そのまた逆も然りなのだ。

「僕の場合は結局ポルティモネンセで試合に出ていないから、今自分の中で、Jリーグで通用してもポルトガルで通用しない部分があったり、逆にポルトガルへ行って『こういうのは通用するんだ』というのがあったりしても、そういうものをまだ試合で試しながらできている状況ではない。だから僕自身は代表で『自分のどんな強みを出せますか?』と聞かれても、正直今はボヤッとしているというか…」

 決してプレーに迷いがあるわけでも、出番がなくて自信を失ったわけでもない。FC東京や鳥栖で表現してきたJリーグでのプレー、オーストリアでの経験、ポルトガルでの新たな学び…そういった全ての要素を踏まえて、試合に出て何ができて何ができないのかという確認をする機会がなかっただけ。

 前向きに取り組んできたからこそ、トライしたいことがあってもできない状況だった。試行錯誤を続けている最中が故に「僕自身が日本代表でのストロングポイントが何かというのは、やっぱり今、この場では正直あまり言えないというか、自分でも何なんだろうなと思うところなので」と語るのである。

●ポルトガルと日本、GKの「違い」

 とはいえ練習をする中でも、日本とポルトガルでGKに求められるものがどう違い、自分が持っている能力のどこを伸ばしていくべきかの手応えはつかみつつある。権田は具体例をあげながら、ポルトガルでの半年間で得た「違い」の感覚を説明する。

「やっぱりポルトガルにいったら、足元のうまい選手が多いんですよ。そこはサガン鳥栖なら何とかなったけど、1つのプレーを取っても、ブラジル人やポルトガル人は足元がしっかりしていて、向こうの中でもうまい選手たちなので。それはわかって行ったんですけど、もっともっと伸ばさなきゃいけないと感じた。

一方、クロスの部分は、向こうは日本でいう『ハイボール』じゃなくて、本当にギュンと入ってくる、グラウンドを横切る『クロスボール』という感覚でした。日本ではどちらかというと『ハイボール』が多かったので、当たり前に取れるボールが多かったんですけど、逆に『クロスボール』に対して向こうのGKはあんまり飛び出さないんですよね。

(ある程度ディフェンスに任せてしまう?)そうそう、そうです。僕は日本では、横からのボールにはGKが予測としっかりした判断と技術を発揮して防ぐのが大事だなとずっと思っていたので、そういうのは逆にポルトガルに行ったらストロングポイントになると思った部分でした。サッカーが全然違うので、日本とは違った見方ができますよね。そうやってリーグや国のサッカーの文化が違えば、求められるプレーヤー像、GK像も変わってくるんです」

●エルサルバドル戦を来季への試金石に

 権田は「ポルトガルは自分に足りないところが多くありそうだと思ったリーグだった」とも語る。ビルドアップへの関わり方、クロス対応、相手との1対1の飛び出し方、ポジショニングなど、細部にわたって「差」だけでなく「違い」を実感しながら、自分のプレーに反映させるために努力する日々。「行くリーグはとりあえず正解だった」と30歳になった守護神は成長への意欲にあふれている。

 9日のエルサルバドル戦は、ポルトガルでの半年間の積み重ねを日本代表にどう還元できるかを推し量る一戦になる。宮城の地で、ポルトガルで感じたことと、日本代表で感じたことをすり合わせながら半年間の成長を自らのプレーに落とし込んでいく。悔しさばかりが募ったアジアカップから、GKとしてどんな進化を遂げているだろうか。もちろんこの1試合が全てではないが、来季の挑戦に向けた重要な試金石ともなりうる。

「向こうでチャレンジしていることを、こっちでもっとアップデートして、それをポルティモネンセに戻った時にさらにアップデートして、という作業をやり続ければいい」

「鳥栖に残っていたら試合に出られた可能性が高いかもしれないですけれど、それを捨ててでも向こうでの練習環境だったりだとか、そういう厳しい中に自分を置きたいと思って(ポルトガルに)行きました。(日本代表に)帰ってきてしっかりプレーできませんじゃあ、本当に行った意味がなくなっちゃうので、そういうのはしっかり見せられたら」

 もしかしたら3歩進んでも2歩下がるような、地道な挑戦だったかもしれない。それでも前進をやめることはない。9月以降のカタールワールドカップ予選でも日本代表の一員でいるためには、エルサルバドル戦でしっかりと挑戦の成果を証明し、さらなる自信を胸にポルティモネンセで正守護神として新シーズンを迎えることが何よりも重要だ。挑戦者・権田修一の決意は固い。

(取材・文:舩木渉)

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最終更新:6/9(日) 13:13
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