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写真家はなぜ、内戦で崩壊したイエメンを撮り続けるのか?

6/10(月) 7:12配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

 フォトジャーナリストのアミラ・アル・シャリフ氏は、イエメン内戦によって避難民となった。故郷に帰りたいと願っても、紛争や病気、職業を理由に逮捕される危険がつきまとっているため、今のところ帰郷はかなっていない。

ギャラリー:内戦で荒んだイエメン、苦難の中の希望 写真16点

 アル・シャリフ氏は、子どものころから身の回りの世界にレンズを向けてきた。だが2014年、その世界は打ち砕かれた。悲惨な内戦により、普通の生活がほぼ不可能になったのだ。「アラブの春」の動乱で、33年間政権にあった大統領が退任を余儀なくされてから紛争が勃発。シーア派の反政府勢力であるフーシ派がイエメンの複数の都市を掌握し、新大統領は亡命せざるをえず、国内は内戦に陥った。

 2015年、米国などに支持されたサウジアラビアが、フーシ派に対する空爆を開始したのに続いて、人道危機が発生した。国連によれば、これまでに1万8000人近くの一般市民が死亡し、現在330万人が住む場所を追われている。

 と言っても、アル・シャリフ氏は統計には興味がない。今も続く危機のため食料が手に入らず、絶望的なまでにやせて骨と皮ばかりになったイエメン人の写真を欧米諸国が欲しがることに、彼女は困惑している。アル・シャリフ氏は筆者に、5年間給与を支払われず、最低限必要なことだけに忙殺されている人々について語った。最低限必要なこととは、食料を探すこと、ごみ捨て場をあさること、病気を避けることだ。

 イエメンではコレラがまん延している。人が密集して暮らしているうえ、飢餓で免疫系が弱り、予防と治療についての情報もないことが感染に拍車をかけている。2017年にはイエメンで100万人以上がコレラにかかり、今また感染が広がっている。患者の半分近くは14歳以下の子どもだ。

 しかしアル・シャリフ氏は、イエメンの生活のこうした面を強調することには関心がない。好んで撮るのは、仕事をする人、学校で勉強したり遊んだりする子どもたち、生きて愛する女性たち、ほころぶ花々だ。彼女はイエメンで、戦争の影にも屈しない光を切り取っている。

「イエメンにいられて、私はとても幸せです」とアル・シャリフ氏は言う。「イエメンでは私は自由なのです」。彼女は筆者に、いつまでも続く家族の祝祭や、友人たちのこと、村々が霧に包まれる山岳地帯、ジャバル・ハラズの美しさについて話してくれる。

 絶望の中で希望に焦点を当てるという、アル・シャリフ氏の選択には狙いがある。「誰でも、その人にしかない苦難があります。ほかの人の苦難まで見たくないのです」。見る人が目を逸らしたくなる衝動を自分の写真で変えられればと彼女は願っているが、まだ十分やれていないという心配もしている。

「人々が共感するのは、強さです」と彼女は言う。「希望、生きること、花開くこと、よみがえることです。人々は光を求めています」

文=ERIN BLAKEMORE/訳=高野夏美

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