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【月刊『WiLL』(7月号)より】古典を歪めた学者たち

6/10(月) 12:18配信 有料

WiLL

歴史に想いを馳せよ

「令和」という元号を聞いた瞬間、「よくぞ素晴らしい元号を選んでくれた」と感動しました。
 ほかの候補も報道されましたが、令和がズバ抜けていい。私が生きる最後の時代であろう元号が、令和で本当に良かった。
 新元号が国書から選定されたことの意義は、国家独立の気概を示したことだけにとどまりません。
 これまでの元号は「明治」(明るく治める)、「平成」(平和に成る)に象徴されるように、言葉そのものは素晴らしくても、そこに時間軸は存在しませんでした。
 現代の日本人は、歴史から目を逸らしながら生きています。「歴史を振り返る」と言っても、「バブルの時代は良かった」と懐かしむ程度で、遡っても「昭和の大戦」まででしょう。
 たとえばユダヤ人は、数千年に及ぶ苦難の歴史がアイデンティティの根源になっているし、米国ですら約二百五十年前の建国精神を大切にしています。
 ところが日本人は長い歴史を持っているにもかかわらず、意識上の歴史は非常に短い。
 しかし「令和」と聞けば、「初春の令月にして……」と、典拠となった文章が頭に浮かび、歴史の中に生きている感覚が生まれます。
 新元号は歴史を忘れた日本人に、「悠久の歴史に想いを馳せながら生きよ」と先人たちが訴えかけていると思えてなりません。
 最古の歌集である『万葉集』から選定された意義はここにあるのです。『万葉集』には、奈良時代以前の歌──古代日本人の生きる喜び、悲しみ、志も記録されている。
 同じ歌集でも、『万葉集』以後の作品であれば歴史の一本線が途中で切れてしまいます。最古の歌集だったからこそ、一本線はつながったのです。 本文:4,897文字

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新保祐司(文芸批評家)

最終更新:6/10(月) 12:18
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