ここから本文です

「特定技能」は日本のモノ作りを変えるのか

6/10(月) 12:22配信

Wedge

 外国人材の受け入れを拡大する改正出入国管理法(入管法)が2019年4月に施行された。単純労働の分野へも門戸が開かれ、すでに外国人労働者が入り始めている。こうした外国人材は日本経済へいかなる影響を及ぼすのか。『移民解禁 受け入れ成功企業に学ぶ外国人材活用の鉄則』を上梓したジャーナリストの永井隆氏に外国人材がもたらす日本のモノ作り再興と経済発展の可能性を聞いた。

バブル期から経営者は人手不足を懸念

 永井氏はビール業界や自動車産業といった企業取材を通じて、長く日本経済界を取材してきた。その中で人事に関する書籍を10年に1度ほどのペースで出版している。「“人”は大きなテーマですべてに通じる。単純労働も開放して外国人を受け入れるのは、日本が閉塞感から抜ける一つの方向性」と、企業人事という方向性から外国人労働者をテーマに据えた。「バブルのころから人口が減ると言われていた。ダイエーの中内功さんも『人は減るから流通は大変』と言っていた」と人手不足は日本企業にとって長期的な問題であったと振り返る。本著は入管法が成立しようとする2018年11月から本格的に取材をはじめ、企業人事を取材するジャーナリストとして、まとめ上げた。

 著書では、自動車会社幹部や中小企業経営者、日本企業に外国人を紹介するブローカー、自治体担当者、すでに日本で働く外国人といった外国人労働にまつわる様々な現場への取材を通じて、外国人労働の実態や課題、日本経済へ寄与する可能性を探っている。「もちろん、議論不十分でスタートしている部分はある。外国人が入ることで、日本人の仕事が奪われるケースもある。それでも、うまく使った企業は競争力を持つことができる」と制度導入をプラスにとらえる。「インテルやヒューレットパッカードといったアメリカでうまく移民を活用した会社は残った。日本でも衝突は起こるだろうが、企業がどう使っていくかが問われていく」と話す。

外国人材を商品開発支える製造現場に

 新たに日本へ来た外国人が企業の人手不足を解消する手段になってしまうことを永井氏は懸念する。「外国人を戦力として使うことが重要。安く使おうとしてしまうと、やられる」と強調する。著書では、外国人労働者に熱視線を送る総合不動産管理会社や、多くの外国人を雇いペルー人社員を日本人への指導も担当する幹部候補生に出世させた自動車部品メーカーといった外国人材を戦力として活用する企業を取り上げる。総合不動産管理会社は東京オリンピック・パラリンピックで需要拡大が見込まれるホテルのベッドメイキングに外国人を担わせ、将来的に海外進出のキーマンとすることを狙う。そのため、すでに雇用する外国人社員には、教育と住環境を提供し、両親が来日した際にも食事会を開き満足度を上げている。自動車部品メーカーのペルー人社員は、派遣社員として金型を交換する工程で働いていたところから、真面目な働きぶりや能力を評価して正社員に登用した。このように、同メーカーは外国人だからと差別をせずに仕事機会を与え、外国人と一括りにしないで丹念にコミュニケーションをとることを重視してきた。外国人が問題なく働くまで10年以上かかったものの、職場で外国人と普通に接する日本人社員は国際感覚が豊かになり、海外展開しやすくなったという。

 また、南米日系人労働者の移住が進んだ群馬県東部の「太田・大泉」を現地取材。文化や生活習慣が違う外国人といかに生活していくか、日本語学級設置など模索している様子を示す。ただ、「共存はできるが、共生となると課題は多く、道半ば」と大泉町職員は会社員としての利益活動だけでなく、生活者として地域で暮らすことの難しさを指摘する。外国人材活用のカギは「日本語・日本文化教育体制をとれるかどうか」と語る。

1/2ページ

最終更新:6/10(月) 12:22
Wedge

記事提供社からのご案内(外部サイト)

月刊Wedge

株式会社ウェッジ

2019年8月号
7月20日発売

定価540円(税込)

■特集 ムダを取り戻す経営――データ偏重が摘んだ「創造の芽」
■ケータイ業界はぬるま湯体質を打破できるか
■ホルムズ危機で露呈 脆弱なエネルギー安保

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事

Yahoo!ニュースからのお知らせ