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『キャプテン・マーベル』が示す“公正さ”は表面的な偽りでしかない:映画レヴュー

6/10(月) 18:11配信

WIRED.jp

映画『キャプテン・マーベル』のデジタル配信が、日本で順次始まった。この作品において女性のスーパーヒーローが主役であることには、ハリウッドにおける「権力の再配分」という重要な暗黙の主題がある。大切なのは映画産業の未来について暗示されていることの中身である──。映画批評家のリチャード・ブロディによるレヴュー。

政治的に「公正」な映画

『キャプテン・マーベル』はプロパガンダ映画のような作品だ。さまざまなメッセージで彩られているが、芸術性には乏しい。また、この作品の場合、肝心のメッセージはストーリーではなくキャスティングを通して語られている。

最近のハリウッド映画では、主要なキャラクターに女性と非白人を含めることは必須条件となっている。そして、それなりの興行収入が期待できる超大作と呼ばれるような作品は、いまや巨額の制作費をかけたスーパーヒーロー映画ばかりだ。

ここには重要な暗黙の主題がある。それはハリウッドにおける権力の再配分だ。もちろん、ほかにもテーマはあるのだろうが、映画そのものは実はたいした意味をもっておらず、大切なのは映画産業の未来について暗示されていることの中身である。

記憶喪失からのアイデンティティ回復

『キャプテン・マーベル』では、ブリー・ラーソンが主役であるクリーの戦士ヴァースを演じる。舞台はハラという惑星で、クリーは変身能力のあるスクラルと戦争状態にある。

ヴァースはある事故によって超人的な能力を手にしたが、そのときのことは何も覚えておらず、細切れな記憶から自分は何者なのかを知ろうともがいている(ちなみに、記憶喪失からのアイデンティティの回復というのは『アリータ:バトル・エンジェル』のテーマでもあるが、どちらも映画表現的にうまくいったとは言い難い)。

ヴァースは悪夢にうなされ、「過去のことはすべて忘れてしまいたい」と思い始める。彼女は特殊部隊スターフォースに所属しており、スターフォースの司令官であるヨン・ロッグ(ジュード・ロウ)は、ヴァースをクリーの超高性能な人工知能(AI)システム「スプリーム・インテリジェンス」に委ねることを決める。

特殊な装置に入れられたヴァースの脳に、彼女を悩ませる悪夢に出てきた謎の女性(アネット・ベニング)の姿をしたスプリーム・インテリジェンスが語りかけてくる。スプリーム・インテリジェンスは「自分ではなく、人々が求めるものは何かを考えなさい……自我を支配するのです」と言い、彼女に再び戦うよう命じる。

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最終更新:6/10(月) 18:11
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